便秘の時には、気持ち悪さや腹痛を伴うことが多いです。このような便秘時の症状を便秘型IBS(過敏性腸症候群) といいます。しかし、それ以外にも便秘は体にダメージを与えます。
腸の働きは、食物から栄養分を吸収し、不要なものを便として排泄するのが最も重要な機能です。しかし、ヒトの研究ですが最近わかってきたことがあります。腸は「第2の脳」とも呼ばれ「考える臓器」でもあるのです。脳内の神経伝達物質であり、精神を安定させる作用を持つ、セロトニンの90%以上が腸で作られるという報告もあります。また、ドーパミンという快楽に関係した作用を持つ神経伝達物質も、50%程度が腸で作られるとされています。ストレスなどで腸の働きが落ちるとセロトニンやドーパミンの分泌が低下します。そうすると、鬱病などの心の病気になってしまいます。また、ヒトの腸内には約1億個以上の神経細胞があり、網目状のネットワークを構成しています。この神経細胞は脳からの司令を受けることなく機能しています。すなわち腸には自律機能があります。
便秘の定義はまだきちんと決まったものがありません。しかし、食べたものが消化され排便されるまでの時間はヒトでは24時間が目安ですから、1日1回以上の排便がなければ厳密な意味では便秘ということになります。便が長期間腸内に留まると腸内細菌叢(腸内フローラ)に悪影響を及ぼします。腸内細菌叢は、乳酸菌、ビフィズス菌など約5000種類の菌が600~1000兆個あり身体を守っています。腸内細菌叢の具体的な働きは、免疫力を高める、感染防御、消化吸収の援助、ビタミンの合成、腸管運動を促進させるなどです。また、ヒトが持つ免疫細胞の70%以上が腸に存在していると考えられていて、いわゆる善玉菌が減り悪玉菌が増えると、発癌物質、発癌促進物質、アンモニア、硫化水素、メタン、活性酸素などの有害物質を発生させます。これらはIBSの原因にもなります。便秘の時のおならが臭いのもこのせいです。そして、これらの有害物質が腸壁から吸収され、下痢や便秘の他にも、肌荒れや疲労感、アトピー、口臭、高血圧、糖尿病、肥満、炎症性腸疾患、癌などを引き起こすと考えられています。動物での研究はまだまだですが、おそらくヒトと同じ様なことが起こっていると推察されます。
図はNexWelさんのウェブサイトから引用
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