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No.346 ハムスター、チンチラの直腸脱

直腸が肛門から反転して飛び出してしまった状態を直腸脱とよびます。犬や猫、フェレットでも起こることがありますが、とくに、ハムスターやチンチラは直腸脱を起こしやすい動物として知られていて、犬や猫、フェレットの場合と違い、命にかかわることが多い疾患で、迅速な対応が必要です。

直腸脱は、下痢や便秘、加齢などが素因となって、過度の腹圧がかかった時に起こります。下痢にはウェットテイルと呼ばれる腸疾患や寄生虫が関わっていたり、便秘には腎不全や水分摂取不足などが関与していることがあります。また、異常な蠕動によって腸の中に腸が入ってしまう腸重積を起こしている場合も多いです。一番多くみられるのは、ハムスターの幼体が下痢をしている時です。

飛び出してしまった腸は、鬱血や感染を起こしてしまいます。処置をせずに時間が経過してしまうと、飛び出した腸が壊死してしまったり、全身に感染がまわって、命にかかわることがあります。とくに腸重積を起こしている時は予後が悪い場合が多いです。

治療は、まずは脱出した腸をなるべく早くに肛門内に戻すことです。すぐに病院へ行きましょう。再脱出することも非常に多いので縫合糸で肛門を巾着縫合します。すでに腸が壊死している場合や、再脱出をする場合は、全身麻酔下での開腹手術が必要になります。また、原因となるような疾患の治療も同時進行で行います。治療はとにかく時間との勝負です。とくに開腹手術は状態が悪くなる前に行うことが必要です。様子をみることは良くない結果になることが多いです。

ハムスターの直腸脱は幼体で下痢をしている場合に多いので、お家に迎えたら、まずは寄生虫がいないかどうか、飼育法が間違っていないかどうかなどを、動物病院で確認してもらってください。また、チンチラでは高齢で多い印象です。定期的な健康診断を受けて下さい。

腸重積で壊死した大腸を取り除き、健康な部分で繋いだところ(手術時の写真が出ます。苦手な方はクリックしないで下さい)

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No241 エキゾチックペットへの全身麻酔
No123 下痢


No.345 リクガメの呼吸器疾患

リクガメの呼吸器疾患時の症状は、鼻からの分泌物(鼻水)、呼吸の異常、食欲や活動性の低下が見られます。ただし、鼻からの分泌物は鼻汁と嘔吐の鑑別が必要です。嘔吐は消化管の問題で起こります。緑から茶色の唾液が鼻から出てくるので、鼻汁と間違いやすいです。また、爬虫類はもともと呼吸数が少ないので、呼吸の異常は分かりにくいです。

呼吸器の異常の原因は非感染性と感染性に分けられます。それぞれ単独の原因というより、複合して発生することが多いです。非感染性の場合では、脱皮不全、異物、ビタミン A 欠乏症、アンモニア臭などが発生要因となります。鼻の穴の周辺の脱皮した鱗や皮膚が鼻腔を塞いだり、床材や粉塵などの異物が鼻に入りこむこともあります。ビタミンAの欠乏が起こると、鼻腔や肺の粘膜が変性して感染を起こしやすくなります。掃除が足りないと排泄物のアンモニアが呼吸器に刺激を与えます。また、横隔膜で胸とお腹を明確に分けられていない爬虫類では、お腹の炎症や腹水が、胸にある肺に影響を与えて、呼吸の異常が起こる場合があります。食滞や便秘によって拡張した消化管が肺の動きを抑えたり、メスだと卵黄が破裂して腹膜炎を起こし(卵黄性腹膜炎)、炎症が肺にまで及ぶ例があります。

感染性の場合は、細菌、真菌、ウイルスなどが原因で、稀に寄生虫があります。感染は主に免疫低下が引き金で発症します。原因は細菌とマイコプラズマが多いです。特にリクガメではマイコプラズマ感染症が問題で、Mycoplasma agassizii が主な原因と言われています。真菌は環境中に存在しているものが多く、免疫が低下した際に皮膚や甲羅に感染しますが、全身性の感染ならびに鼻炎・肺炎まで引き起こす場合もあります。また、カメは長くて折れたたみこまれた気管のために、肺が閉鎖的になりやすく、真菌性肺炎になりやすい解剖学的な特徴があります。ウイルス性肺炎は、ヘルペスウイルスとラナウイルス(イリドウイルス)が原因となることが多く、結膜炎や鼻炎などの上部気道炎に加えて、気管や口の中に黄色く見える化膿巣ができて肺炎を併発します。他にも神経症状、肝炎や腸炎も引き起こします。ヘルペスウイルスは地中海沿岸に生息するギリシャリクガメやヘルマンリクガメ、ヨツユビリクガメなどで無症状のキャリアになりやすいことが問題とされ、これらのカメでは口内炎の症状くらいしか出ませんが、ヘルペスウイルスは他の種類のカメへも感染することが知られ、ウイルスの種類の多様化も進んでいます。分類上ではそのウイルス名が混乱しており、Chelonivirus(カメウイルス)という新たな分類名も提案されています。ラナウイルスはカエルに大量死をもたらすウイルスとして有名ですが、カメにも肺炎と口内炎などを起こし、全身に蔓延して死亡することもあります。カメのウイルス性肺炎では、マイコプラズマとの重複感染によって、症状がひどくなることもあります。リクガメでは寄生虫であるコクシジウムが全身に蔓延し、その結果肺炎も引き起こして死亡することがありますが稀です。

カメの呼吸器症状は、苦しいために、空気を吸おうとして首と前足の小刻みに出し入れする動作が頻繁に見られます。リクガメでは鼻水が見られ、鼻ちょうちんができることもあります。リクガメの鼻水は、透明だと非感染性が疑え、感染がひどくなると黄色や緑色の膿性に変化し、湿った鼻の呼吸音が「ピーピー」と大きく聞こえてきます。いずれのカメも症状が進行すると深い呼吸をして、口を開けたままになり、目を閉じて活動も低下します。この段階だと食欲もほぼなくなっているはずです。鼻と目、耳は細い管でつながっているので、結膜炎や鼻孔と目の間が腫れたり、鼓膜が赤くなったり、そして中耳炎が併発することもあります。

肺炎はレントゲン検査で診断しますが、軽症例ではレントゲンで明確な肺炎を診断できない場合があります。可能ならCT検査がベストです。

治療は、鼻汁から細菌や真菌が認められれば抗生物質や抗真菌剤を投与します。ウイルスの検査は難しく、例え診断されても特効薬はありません。飼育環境の見直しや点滴、強制給餌、状況によっては食道瘻チューブの設置などが必要です。


鼻水が出ているリクガメ


No.344 犬の胆嚢粘液嚢腫

皆様、あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。

胆嚢はイチジク状の袋で、肝臓の右側にくっついています。肝管という管で肝臓とつながっていて、肝臓で作られた胆汁は一旦胆嚢に蓄えられます。胆汁は水分が豊富で、胆汁酸、胆汁色素(ビリルビン)、コレステロールなどが多く含まれています。胆嚢では胆汁の水分を吸収して濃縮しつつ、粘液(ムチン)を分泌して胆嚢自身が傷つかないように守っています。食事をすると胆嚢は収縮して、たまった胆汁は総胆管という管をとおり、十二指腸に放出されます。腸に放出された胆汁は、食物と混ざり脂肪分を乳化させ、腸からの脂肪吸収や排便の助けをしています。余った胆汁は小腸で再吸収されます。

胆嚢粘液嚢腫とは、胆嚢内にムチンが過剰に貯留して胆嚢が硬く拡大した状態になり、胆汁の分泌障害や、硬く大きくなった胆嚢が胆管を圧迫して閉塞性黄疸を起こす病気です。重度になると破裂を起こします。この病気は、胆嚢自身を胆汁から保護するために分泌されるムチンが何らかの原因で過剰になったことで発生すると考えられていますが、正確なメカニズムは解明されていません。疑われている原因として、胆嚢の収縮機能低下、胆泥症(微小胆石)、脂質の代謝異常、ホルモンバランスの異常(甲状腺機能低下症、クッシング症候群など)、腸炎などが胆嚢内の粘液過剰の要因になるのではないかと考えられています。初期段階ではほとんどの場合無症状です。長期間かけて胆嚢内で粘液の貯留が限界を超えたり、細菌感染を起こしてはじめて症状が確認されます。定期的に超音波検査を行うと簡単に早期発見が可能です。

胆嚢内のムチンが限界量になった場合、胆汁の分泌障害や胆嚢炎、膵炎、肝炎などによって、嘔吐、下痢、食欲不振、発熱、黄疸、腹痛などが確認されます。とくに黄色いものを吐くという症状がある犬は注意が必要です。胆嚢が破裂した場合は、胆汁による腹膜炎によって命に関わる状態になります。中高齢犬に多く発生します。好発犬種として、プードル、チワワ、柴犬、シェットランドシープドッグ、コッカー・スパニエル、ビーグル、シーズー、ミニチュアシュナウザーなどが挙げられまが、どの犬種でも起こります。

治療は、内科療法と外科療法があります。内科療法は、利胆剤によって胆汁分泌を促進することで胆汁の流れを改善します。ただし、粘液の貯留が重度な場合は、胆嚢破裂に十分注意して使用します。細菌感染が疑われる場合は、抗生剤を投与して感染をおさえますが、あまり効果的な薬はありません。基礎疾患がある場合は、そちらの治療も同時に行われます。特に甲状腺機能低下症がある犬は、そちらの治療によってこの病気の改善が見られる場合があります。重症な場合は、速やかに外科療法を行います。外科療法は胆嚢全摘出を行います。総胆管に閉塞がある場合、カテーテルによる洗浄や、総胆管を切開して閉塞を取り除いたり、胆嚢や総胆管を十二指腸につないで迂回路を作成する手術が検討されます。

原因がよくわかっていないため、予防は難しいのですが、胆嚢の機能をしっかり保つことと血液中のコレステロールや中性脂肪が過剰にならないように管理することです。運動をし、太らせないこと。高カロリーな食事や脂肪分の過剰な摂取は避けましょう。食事の間隔を適度にあけて間食を控えると、胆嚢の収縮する機能は発揮されやすいです。よく効く薬もないので、早期で発見して可能なら外科手術がオススメの疾患です。


胆嚢粘液嚢腫の硬くなって拡大した胆嚢

こちらもご参照下さい
No336 朝食前にに黄色いものを吐く犬猫
No172 急性胆管炎・痰応援
No70 胆嚢疾患


No.343 大腸の悪性腫瘍

便秘が良くならないときは大きな原因があることが多く、その中で最も厄介なものが大腸の腫瘍です。とくに悪性のものには早い対応が必要です。大腸は盲腸、結腸、直腸からなり、ヒトは大腸癌や胃癌が非常に多いといわれていますが、犬や猫はそこまで多くはありません。おそらくは動物が比較的均一な食生活をしていたり、刺激物をほとんど食べないからだと考えられています。寿命の違いもあると思われます。しかし、まったく発症が無いわけではありません。通常の処置で便秘が改善しなかったり、嘔吐や痛みや便に血が混じる場合、症状、便検査、直腸検査、血液検査、レントゲン検査、超音波検査などで大腸の腫瘍を疑った場合は、確定診断には大腸内視鏡検査が推奨されます。大腸の腫瘍には、リンパ腫、腺癌、平滑筋肉腫、肥満細胞腫、GIST(消化管間質腫瘍)などがあり、どれもが浸潤性に大きくなって便の通過を妨げるようになります。

大腸内視鏡検査で悪性の腫瘍が見つかった時の第一選択は外科的切除です。多くの場合が高齢の動物であることから飼主様が麻酔を心配される場合が多いのですが、腫瘍が小さいうちなら手術も比較的簡単で、手術だけで根治が見込める場合もあります。腫瘍が広範囲に広がっている場合や、他部位に転移がみられる場合は予後が悪いことが多いです。通常、盲腸、結腸の手術は開腹して行います。直腸の手術はプルスルー(引き抜き術)といって、肛門部から直腸を出して行います。また、腫瘍が小さくても、直腸(最後の大腸)の腫瘍で肛門括約筋を温存できない場合は、手術後も随意的な排便ができなくなり術後の管理が大変です。肛門の開口部だけでも残せると術後の管理は楽になります。

皆様、今年も1年間ありがとうございました。良いお年をお迎えください。


プルスルー後の肛門部


No.342 フェレットの脱肛

肛門から粘膜や直腸の一部が脱出すること脱肛と言います。正常でも排便時の息みで一時的な脱出がしばしば見られることがありますが、通常は排便後に自然に戻ります。 脱出が習慣となり、元に戻らない状態になったものが病気としての脱肛です。

とくに幼体のフェレットには脱肛が多く見られます。その理由はよく分かっていませんが、息み過ぎや肛門腺除去の手術の影響が原因として考えられています。

息むと腹圧がお尻にかかり脱肛します。ヒトの妊婦さんが妊婦してお腹の子が大きくなると痔になりやすいと言われているのと同じです。幼体のフェレットに脱肛が多い理由には、ふやかしたフードから固形フードへ切り替える時に、一時的にお腹を壊しやすいことがあげられます。他にも幼体は腸内細菌が安定しておらず、腸内細菌叢のバランスを崩しやすく、軟便や下痢を起こしやすいといわれています。フェレットの性格にもよりますが、興奮しやすかったり、あるいはケージから脱出しようと頑張って息んでしまうこともあります。胃腸に異物が詰まっていたり(消化管閉塞)、膀胱結石や尿道閉塞で尿が出にくい時も腹圧がかかります。また、フェレットは幼体期に肛門脇にある2つの臭腺を除去する手術を受けています。この臭腺を取り除いたがために、肛門に余裕が作られ、息んだときなどに脱肛しやすくなるのかもしれません。

脱肛すると痛いです。自然に治ることもありますが、早期対応しないと元に戻らなくなるので動物病院で治療を受けるのがベストです。軽度だと軟膏を塗って、粘膜の炎症を抑えるようにするだけで治ることもあります。しかし、薬を塗ってもフェレットが舐めてしまうために、塗り薬での治療は長期化することが多いです。便が硬くならないようにふやかしたフードを与えるなどして息む原因も減らすようにします。粘膜がひどく出てしまっている場合には、粘膜を中に入れて肛門の周囲を縫い合わせる手術を行います(巾着縫合)。この処置は局所麻酔で可能です。1~3週間後に抜糸します。重度の場合は全身麻酔下で大腸を腹壁に縫い付け、直腸が脱出しないようにします。

フェレットの脱肛は幼体に多いです


No.341 外耳道の手術

80%以上の犬が何らかの耳のトラブルを抱えているといわれています。軽症の場合は定期的な管理で十分ですが、外耳炎が慢性化して内科治療で耳道環境が改善しない場合は外耳道の手術が必要です。とくに、耳垢腺の過形成や耳道周囲の軟骨まで病変が拡がると内科管理は難しくなります。また、外耳炎が進み中耳炎になると治療はより大変になります。外耳道の手術には病変の拡大度合いにおいて以下の様なものがあります。病変の拡大度合いを術前に把握するにはCTが必要ですが必須ではありません。

1.垂直耳道切開術
垂直耳道壁を部分切除
適応
外耳道開口部の変性が軽度の場合
細菌が増殖しづらい耳道環境を作る
初期外耳炎の進行抑制
中耳炎の予防
ケアしやすい耳道を作る

2.垂直耳道切除術
変性・閉塞した垂直耳道を切除
適応
垂直耳道の軟骨変性が顕著
垂直耳道全体の非可逆性の変性
耳道環境を改善、外耳炎の進行抑制
垂直道の耳道の腫瘍
中耳炎の予防

3.外耳道亜全摘術
垂直耳道を全摘
水平耳道を5mm程度残して切除
適応
制御不能の進行性外耳炎
水平耳道まで病変がある場合
水平道の耳道の腫瘍
中耳炎の予防

4.全耳道切除術
すべての耳道を除去
適応
制御不能の進行性外耳炎
鼓膜の側まで病変がある場合
鼓膜の側の腫瘍
通常は中耳炎対応で5とセットで行う

5.外側鼓室胞切開
外側鼓室胞の尾腹側を切除
鼓室胞内を清浄化する
適応
制御不能の進行性外耳炎で鼓室まで病変が拡大している場合
中耳炎
耳道の腫瘍などで鼓膜の内側や鼓室胞まで病変がある場合
4と組み合わせて行う

2~5は耳道の再建術も必要です。以前は4や5の手術は耳道を再建せずに耳を閉じてしまう手術が主流でしたが、そのような手術では術後に瘻管を作ることがあり、とても痛く、再手術が必要になる場合が多くありました。手術は頻雑になりますが、耳道をきちんと再建することによりこのような状況を防ぐことができます。また、2~5は、術後月に一度程度の耳の穴周囲の毛刈りや耳道内の洗浄も必要です。
4~5の段階になると、手術後に顔面神経麻痺などの合併症が発生する場合があります。とくに短頭種では注意が必要です。
一度悪くなった耳道は完全には元に戻りません。外耳炎は内科治療で上手く行っていても、悪くならない様に生涯のケアが必要な場合が多いです。手術も次期を逸せずに1か2の段階で行うことが望ましいです。

こちらもご参照下さい
No320フレンチブルドッグの中耳炎
No319中耳炎
No188外耳炎3
No58外耳炎2
No57外耳炎1


No.340 ハムスターの脱毛

ハムスターに脱毛疾患は多いです。主な鑑別としては、

・痒みと発赤が酷い:アレルギー、細菌性皮膚炎、好酸球性皮膚炎
・痂疲が増えて掻痒がある:疥癬
・痒みはなく皮膚は比較的きれい:ニキビダニ
・幼体で痒みはない:真菌症(→No256皮膚糸状菌症)
・高齢で痒みはない:肝疾患、腎疾患、副腎疾患
・痒みはなく色素沈着がある:副腎疾患
・自壊や痛みがある:皮膚型リンパ腫(→No202リンパ腫)

いくつかの疾患が合併している場合もあります。診断は症状に加えて、年齢、皮膚のスクラッチ検査、ウッド灯検査、培養検査などを行い、難治性であれば皮膚の組織検査を行います。肝疾患、腎疾患、副腎疾患を疑う場合は、血液検査、レントゲン検査、超音波検査などが必要です。

また、木屑系、チップ系の床材を使用している場合は、それがアレルギーの原因になっている場合があります。アレルギーに配慮とうたっていても良くない場合が多いです。チモシーや紙製のものに変えましょう。肥満や脂の強い食事も皮膚にはよくありません。

とくに高齢のハムスターは、診断がついても投薬が必ずしも有益にならない場合があります。抗生剤、抗真菌剤、駆虫薬など、ハムスター用に作られたものはありません。元気そうにみえても実際は内臓が弱っている場合もあります。そのような場合は副作用がほとんどない代替医療もオススメです。


ニキビダニ症で脱毛した高齢(2歳)のハムスター


No.339 流動食の与え方

高齢や病気のために、自分で食事が出来ない場合は流動食を使って、食べさせてあげることが必要です。動物の種類や状態によって様々な方法がありますが、基本的な手技は以下のようになります。優しく声をかけながら行いましょう。

1.頭を上に座らせます

2.汚れないようにタオルなどを口元や前頬部に添えます

3.後ろから保定して口の横から与えます

4.一度にたくさん与えずに、嚥下を確認してから次を与えます

5.時々水を与えます

6.時々背中を軽く叩いてゲップをさせます

7.タオルやガーゼ、歯ブラシなどで口元などをきれいにします

8.終了後20-30分くらいは、クッションやタオルなどを利用してなるべく体位を変えないようにします

9.大型犬などで体位の維持が困難な場合は左下に寝かせます(胃捻転の予防)

こちらもご参照下さい
No325胃瘻チューブ
No219高齢動物への給餌


No.338 猫の特発性膀胱炎

猫の特発性膀胱炎は間質性膀胱炎とも呼ばれ、きちんとした研究はありませんが、多くの猫が罹患すると考えられています。特発性とは原因不明という意味です。膀胱で無菌性の炎症が起こることにより出血する病気で、ヒトの女性の間質性膀胱炎に似ているといわれています。体質を持っている場合は繰り返し起こることが特徴です。一旦落ち着いたように見えてまたしばらくすると再発する事が多いです。ストレスが誘因になるともいわれています。

診断は、細菌性膀胱炎・膀胱内の結晶・結石、泌尿器系の腫瘍、腎臓や尿管、尿道からの出血などの他の疾患を除外することによって行います。具体的には、頻尿、血尿、排尿痛などの膀胱炎の症状、一般的な尿検査に加えて、尿の細菌培養、超音波検査、造影X線検査、場合によってCT検査などを行います。他の重大な疾患を見逃さないようにすることがとても重要です。

治療は炎症を和らげる薬の服用や副作用の少ない代替医療などを用いますが、頻尿や目に見えての血尿や排尿痛が無ければ、無治療で3-6ヶ月毎に検査をして様子をみることも多いです。その期間内でも目にみえての膀胱炎の症状がみられたら、その時点で治療が必要です。

体質が大きく関与していると考えられているので、長期間のお付き合いになることもあります。食事をウェットフードに変更したり、飲水量を増やすと少し楽になることがあります。また、トイレの見直し、ストレスの除去も重要です。今後の詳しい研究が待たれる疾患の1つです。

こちらもご参照下さい
No328尿石症:腎・尿管・膀胱・尿道結石
No224猫に水を飲んでもらう方法
No151猫の排泄の問題
No36猫の膀胱炎


No.337 レプトスピラ症の発生続報

先日、逗子海岸でレプトスピラに感染して亡くなった犬の続報です。(→No335犬のレプトスピラ症)

当該犬は2歳4ヶ月の去勢済の雄犬で、千葉県佐倉市在住、生活範囲は自宅周囲のみとのことです。

9月30日に嘔吐、下痢、食欲・活動性低下を認めるようになり10月4日に病院受診、その時の症状は、食欲廃絶、意識沈鬱、低体温(36.4°C)。 検査では急性腎不全、肝性黄疸。レプトスピラに対するワクチンの接種歴はなかったそうです。2歳で基礎疾患もなく、急性腎不全で黄疸、DIC (→No144種性血管内凝固症候群)による肺出血で死亡し、尿のPCR 検査 によりレプトスピラ陽性となったため、レプトスピラ症と診断されました。

残念ながら、このワンちゃんは亡くなってしまいましたが、この後、神奈川県でも千葉県でもレプトスピラ症の報告はありません。どおしても心配な方は、当院でもワクチンのご用意はありますが、横浜市では今のところ慌てて接種する必要はないと思います。