No.500 免疫力

免疫力とは、体が病原体(ウイルス、細菌、寄生虫など)や異物に対して防御する能力を指します。具体的には体内に侵入した病原体を識別し、これを排除するために働く免疫システムの全体的な機能や効果を意味します。免疫力が高いほど、感染症にかかりにくく、病気からの回復も早くなります。免疫力は自然免疫と獲得免疫の2つから成り立っています。

自然免疫(先天免疫)
動物が生まれつき持っている防御機構で、病原体が体内に侵入した際に最初に反応する免疫システムの一部です。これは特定の病原体に対する防御ではなく、一般的な侵入者に対して広範囲に働くため、非特異的免疫とも呼ばれます。以下のような要素が含まれます。
物理的・化学的バリア:皮膚や粘膜、胃酸、涙などが病原体の侵入を防ぎます
細胞性免疫:マクロファージ、好中球、自然リンパ球(NK細胞)などの免疫細胞が病原体を識別し、攻撃・排除します
炎症反応:病原体の侵入により、感染部位が腫れたり熱を持つことで、免疫細胞が集まりやすくします
補体系:補体と呼ばれるタンパク質が、病原体を直接破壊したり、免疫細胞を引き寄せる役割を果たします。
自然免疫は、すぐに反応を開始するため、感染初期に重要な役割を果たしますが、一部の病原体に対してはこの免疫だけでは不十分な場合があり、その場合、獲得免疫が働きます。

獲得免疫(適応免疫)
自然免疫とは異なり、特定の病原体に対して体が学習して反応する免疫システムです。これにより、体は特定の病原体に対する記憶を持ち、同じ病原体が再び侵入した際には、迅速かつ効果的に対応できるようになります。以下の特徴があります。
特異性:獲得免疫は特定の病原体や異物に対して特異的に反応します。これにより、感染の種類に応じて適切な免疫応答が起こります。
免疫記憶:獲得免疫には記憶機能があり、一度遭遇した病原体を覚え、再感染時に素早く強力な応答を引き起こします。これがワクチンが効果を発揮する基盤です。
リンパ球:獲得免疫は主にBリンパ球(B細胞)と Tリンパ球(T細胞)、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)というリンパ球によって実現されます。
Bリンパ球;特定の抗原(病原体の一部)を認識し、成熟して、抗体(免疫グロブリン)を大量に産生する形質細胞となり病原体を無力化し、メモリーB細胞に記憶します。
Tリンパ球;ヘルパーT細胞が司令塔となり、キラーT細胞に指示を出しウイルスに感染した細胞を直接攻撃します。また、制御性T細胞が免疫系の暴走を起こさないように制御・調整します。
ナチュラルキラー細胞;殺傷力が高く、癌細胞やウイルスを見つけたらただちに攻撃します。
獲得免疫が一度活性化されると、その病原体に対する免疫力が長期的に持続することがあり、これが長期間の免疫記憶につながります。このため、一度かかった病気に対しては、二度目以降は軽症で済むことが多いです。獲得免疫は永遠にもっていられる場合ばかりでなく、一定時間が経過するとなくなってしまう場合も多いです。とくにワクチンで獲得した免疫は期間が短いといわれています。

免疫力を高めるためには、動物種によって異なりますが、日常生活の中で以下のような習慣や対策を取り入れることが有効です。
バランスの取れた食事:偏った食生活、肥満や痩せ過ぎには注意しましょう
十分な水分補給:とくに高齢動物や猫では水分が不足しがちです
腸内環境の整備:便の状態をよく観察してください
十分な睡眠:規則正しい時間に十分に眠ることが重要です
適度な運動:無理のない範囲で動物種や年齢に合わせた運動をしましょう
ストレス管理:長い時間1人にさせたり過干渉は止め、動物と良い距離感を持ちましょう。1人になれる場所、安心出来る場所を作ることも重要です
受動喫煙の防止:受動喫煙はリンパ腫はじめ様々な疾患の発生率を上げることが分かっています
衛生管理:飼育場所の掃除はこまめに、定期的なシャンプー、ブラッシング、動物種によっては水浴び、砂浴びを行いましょう
日光浴:ホルモンバランスを保ち、幸せホルモンといわれるセロトニンの分泌が活発になり、自律神経にも良い影響があり、認知症の予防にもなります
環境エンリッチメント:とくにエキゾチックペットでは飼育場所を広くしたり、本来の生息地の環境に近づけたり、給餌回数を考えるなどの工夫が重要です

これらの習慣を日常生活に取り入れることで、免疫力を維持し、強化することが期待できます。また、定期的に健康診断を行い体調管理を怠らないことも大切です。

こちらもご参照下さい
No.493 カロリー計算
No.485 動物の受動喫煙
No.428 日光浴
No.168 タンパク質の「質」
No.164 脳-腸-微生物相関
No.13 エンリッチメント