誤嚥とは唾液や食物、胃液などが気管に入ってしまうことをいいます。肺炎と誤嚥性肺炎は原因が異なります。肺炎は細菌や真菌やウイルス、アレルギーなどによって気管や気管支、肺胞などに炎症が起こる疾患です。一方、誤嚥性肺炎は誤嚥によって口腔内の細菌が食べ物と一緒に肺に入り込み炎症が起こる状態です。この誤嚥性肺炎は主に高齢動物に多く見られます。また、寝たきりの状態になるとよく起こります。
通常、食べたものは食道を通って胃に送られ消化されていきます。誤嚥性肺炎は食物が誤って気管に入り込んでしまい生じます。健康な動物でも唾液が誤って気管に入ってしまうことがありますが、嚥下反射という反射機能が働き、むせ返る程度で通常は大事に至りません。しかし高齢動物は嚥下反射の力が低下していて誤嚥が起こりやすくなっています。
口腔中には多くの細菌がいて、その中には肺炎を引き起こす細菌も含まれています(主に嫌気性菌)。不衛生な口腔内では、唾液の誤嚥によって肺に細菌が入り込んでしまうことで肺炎を引き起こす事があります。その細菌の代表格が歯周病菌です。歯周病は加齢とともに増加し、高齢動物のほとんどが歯周病に罹患しています。歯周病が誤嚥性肺炎を引き起こすのは、肺炎の原因菌が肺や気管支に棲みつくのを助けるからといわれています。
また、歯周病時は歯肉に炎症が起こり炎症性物質が放出され、歯肉の毛細血管から全身に入り、様々な病気を引き起こしたり悪化させる原因となる事も知られています。炎症性物質は、血糖値を下げるインスリンの働きを悪くさせ糖尿病のリスクを上げます。また、早産や低体重児出産などの出産のトラブルや、肥満、動脈硬化による心臓病、脳梗塞にも関与しています。このように、歯周病は口腔内のトラブルだけにとどまらず、様々な疾患の原因、悪化要因となります。日頃のプラークコントロールと、定期的な歯石除去で口腔内を清潔に保ちましょう。
歯周病は誤嚥性肺炎の原因になります
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農林水産省の犬の歯石除去に対する見解
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