毛引き症とは、その名の通りインコが自ら毛をむしったり噛んでしまい、脱羽や出血、傷を負ってしまう問題行動を指します。原因は病気からの場合とストレスがあります。とくにストレスが問題になる場合が多く、遺伝や幼鳥時の母鳥との関係も影響するといわれています。毛引きは癖になり習慣化してしまうと羽毛が減り、体温調節がしにくいなどの弊害が出てきます。
・病気
毛引きを発見した際には、まず、病気や怪我が無いか確認します。皮膚炎やダニなどの寄生虫による痒みや痛みで違和感を感じている場合があります。また、甲状腺能低下症や栄養障害、ウイルス感染が原因の場合もあります。
・ストレス
野生の鳥類は仲間とコミュニケーションを取り、自由に飛んだり獲物を捕まえ、生きていくため忙しく動き回っているので滅多に毛引きしませんが、飼育下では暇を持て余し、コミュニケーション不足や運動不足からストレスを抱え込みやすく毛引きするといわれています。多くは心因性のストレスが原因です。原因を特定して取り除いてあげることが必要です。鳥類は外部の刺激にストレスを感じやすく、そのままの状態が続くと衰弱して突然死する場合もあります。他の動物と飼育スペースが同じ、体調不良、騒音や温度変化など様々な事が原因となります。常習化してしまうと原因を取り除いても、症状が無くならない場合もあります。また、神経質だったり臆病だったりすると、些細な事にもストレスを感じ毛引きを続ける様になります。飼主さんが日常的にコミュニケーションを取り、行動パターンや性格を把握して、それぞれに合った飼育スタイルにする事が大切です。
毛引き症に至るストレスの原因として、よくあるものをご紹介します。
・発情
発情期は気持ちが不安定、神経質になりイライラしやすくなります。そんな状態を発散させようと毛引きが始まる場合があります。発情行動は生後6ヶ月をくらいから見られ、季節に関係なく発情期になるインコもいれば、野生と同様に春先と秋口に発情する場合もあります。発情期の特徴としては、動きが活発になり陽気に踊るような仕草を見せたり、鳴き声が激しくなる場合もあり、細かい仕草には違いがありますが、落ち着きなく動きが大きくなりピョンピョン跳ねます。また、飼主さんに対して攻撃的になる場合もあります。興奮状態で自分の気持ちをコントロールできなくなり毛引きを行います。1年中発情期の状態が続くと発情過多となり、体調不良や寿命を縮める要因にもなります。落ち着いて生活できる様に、複数飼育の場合、別々の部屋を用意することが必要な場合もあります。
・退屈・暇
飼育下では運動不足になりやすく時間を持て余しがちです。お腹もいっぱいで特にやることもない状態になると、退屈になり毛引きが始まる場合があります。暇で退屈な状況を回避するため、放鳥したり、コミュニケーションを取る、おもちゃを与えるなども大切です。インコによっては構いすぎてしまうと、逆にストレスになってしまうことがあるので注意が必要です。性格や好みを考え、適度な距離感でコミュニケーションを取りましょう。
・寂しい
インコはヒトに慣れ、おしゃべりしたり、手乗りになったりと愛嬌のある姿を見せてくれます。甘えん坊の場合は、飼主さんが長時間家を開けた状態でいると寂しさから毛引きします。長時間1羽だけでいる状況はストレスが溜まりやすく刺激もないため毛引きが起きやすくなります。留守番の時間が長くなってしまう場合は、おもちゃや齧り木を入れておくなどケージ内の工夫をしましょう。ご家族の中で早めに帰れる方がいればお留守番する時間をなるべく短くしてあげるのも良いです。
治療の第一はストレスの原因を取り除き、良い環境で飼育することです。栄養バランスのとれた食事と十分な睡眠、適度なコミュニケーション、放鳥などの運動も必要です。また、部屋の温度管理、発情しにくい環境作りもポイントです。毛引き症になるインコは怒りっぽい場合が多いですが、ほとんどは不安やイライラからの影響です。神経質で臆病な性格の場合は、ドアの開閉音や車の音にもストレスを感じます。静かな風通しの良い適度に日の当たる場所にケージを設置し、おもちゃや齧り木なども使用します。
薬物治療は一時的に症状をよくする場合はあっても完全には治りませんし、安全性も証明されていません。エリザベスカラーも1つの方法ですがストレスの原因となる場合があります。当院では、生活の改善とともに代替医療(ホメオパシー、音響療法、漢方薬など)をおすすめしています。症状が出てからの時間の経過が長いと治療にも時間がかかります。毛を抜きやすい箇所として、胸や羽の付け根、肢などがあげられます。健康な時でも時々ボディーチェックをして早めに発見してあげるのが大切です。
毛引き症の治療は時間がかかります
以下もご参照下さい
No.405 小鳥の出血
No.354 病気の小鳥のご家庭でのケア
No.217 小鳥の卵詰まり
No.91 小鳥の基本