赤血球の破壊亢進により、肝細胞内におけるビリルビンの処理(抱合)が追いつかない場合は、非抱合型(間接型)ビリルビン:Indirect bilirubin(I-bil)優位の黄疸が生じます。これは主に各種溶血性疾患の際にみられます。過剰生産でなくてもI-bilを肝臓に取り込めない場合にも溶血性黄疸が起こります。赤血球の凝集、網状赤血球の増加を認めた場合は溶血性黄疸を疑います。肝疾患でI-bilが高値となるものとしてはヒトでは遺伝性の体質性黄疸がありますが動物ではよくわかっていません。肝硬変においても非代償性の場合や、あるいは劇症肝炎のような著しく肝予備能が低下した場合に、ビリルビン抱合能低下によりデータ上I-bilが優位となる場合があります。I-bilは水に溶けないため、尿中ビリルビンは増加しません。動物では主に以下のような疾患で溶血性黄疸が生じます。溶血性黄疸は他の黄疸と比べて致死率が高いことが知られています。早期の治療の介入が必要です。
免疫性:免疫介在性溶血性黄疸(IMHA) 、不適合輸血など
感染性:バベシア、ヘモプラズマ、レプトスピラなど
ハインツ小体性:玉ねぎ、DLメチオニン、アセトアミノフェン、メチレンブルー、プロピレングリコールなど
機械的刺激:大静脈塞栓症、心臓弁膜症、DIC、非典型的溶血性尿毒症症候群(D-HUS)など
有棘赤血球の増加:血管肉腫、猫の肝リピドーシスなど
敗血症
重度肝障害
遺伝病:ピルビン酸キナーゼ欠乏症、ホスホフルクトキナーゼ欠損、メトヘモグロビン血症など
新生児黄疸(ヒト):RBCが多いくグルクロン酸抱合の力が弱いため
IMHA時の赤血球凝集
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