犬や猫の肝臓のFNA検査(針生検)を行うと、空胞状変性という結果がよく出ます。肝細胞の空胞状変性とは、肝細胞内に空胞状の構造が現れる病理学的な状態を指します。これは肝細胞の異常な変化を示しており、さまざまな肝疾患や全身性の病態に関連しています。空胞は脂肪、グリコーゲン、水、またはその他の物質が溜まったものに由来します。空胞状変性が見られる時は、脂肪変性(最も一般的)、水腫性変性、グリコーゲン変性などが起こっています。
以下の疾患や状態が原因となります。
糖尿病:高血糖による代謝異常により、肝細胞に脂肪やグリコーゲンが蓄積します。
肝リピドーシス:猫ではとくに肝リピドーシスが発生しやすく、食事制限やストレスによる急激な食欲不振が誘因となります。肝細胞内に中性脂肪が過剰に蓄積し、顕著な空胞状変性を引き起こします。
ホルモン異常:犬のクッシング症候群、猫の甲状腺機能亢進症などで、コルチゾールや甲状腺ホルモンの異常が影響を与える場合があります。
中毒:タマネギ中毒、キノコ中毒、薬剤中毒(ステロイド、NSAIDs、アセトアミノフェンなど)や有害植物による肝細胞障害。
感染症:レプトスピラ、猫伝染性腹膜炎(FIP)やその他のウイルス、細菌、寄生虫感染。
低酸素状態:ショックや心臓疾患による肝臓への血流不足。
栄養不足や過剰:肥満や飢餓状態による脂肪の異常動員、ビタミンE欠乏。
肝臓腫瘍:原発性、転移性の腫瘍。
確定診断は、症状、病歴、血液検査、レントゲンや超音波、CTなどの画像検査、肝臓の組織検査などで総合的に行います。治療も対症療法と原因疾患に準じて行います。
空胞状変性を起こしている肝細胞
こちらもご参照下さい
No.501 レプトスピラ (Leptospirosis)
No.464 猫伝染性腹膜炎 (Feline infectious peritonitis: FIP)
No.426 猫の肝リピドーシス
No.396 ユリ科の野菜の誤食
No.304 糖尿病 (Diabetes)
No.296 生検
No.79 犬の副腎皮質機能亢進症(Cushing’s syndrome)
No.78 猫の甲状腺機能亢進症 (Hyperthyroidism)