No.501 レプトスピラ (Leptospirosis)

先日、金沢区の方でレプトスピラを発症した犬が報告されました。

以前にも書きましたが、レプトスピラは人獣共通の細菌(スピロ ヘータ)の感染症で、病原性レプトスピラは、主に保菌動物(ドブネズミなど)の腎臓から尿中に排出されます。保菌動物の尿で汚染された水や土壌 から経皮的あるいは経口的に感染します。河川や田んぼの周辺など、とくに大雨の後は注意が必要です。2003 年より 4 類感染症として届出が義務付けられている疾患です。

症状は、発熱、悪寒、頭痛、筋肉痛、腹痛、結膜充血などの感冒症状から重症となると多くは黄疸を呈します。急性腎不全によって多尿または無尿となっている場合もあります。治療が遅れると、炎症に起因する DIC(播種性血管内凝固症候群)や SIRS(全身性炎症反応症候群)による多臓器不全に移行し死に至ることもあります。

レプトスピラは、250 以上の血清型に分類されそのうち 7 血清型が届出対象となっています。血清型は地域によって偏りがあり、臨床症状とも合致しません。異なる血清型のワクチンは基本的に予防に有効ではありません。

診断は、PCR による遺伝子検査で感染は確定できますが血清型の分類はできません。感染初期は抗体が産生されていないため抗体価のみでは診断は困難です。感染初期には全血を材料とする遺伝子検査で、腎不全の認められる時期には尿を材料とした遺伝子検査で陽性となれば診断ができますが、陰性であっても本症を否定できないので1週間以上間隔をあけたペア血清を用いて抗体価を測定することが理想的です。また、ワクチンによっても抗体が検出されることがあります。

治療は、ストレプトマイシンやアンピシリンやアモキシリンという抗生剤を腎障害に注意しながら使用します。寛解後はドキシサイクリンという薬を数週間を投与し、尿中への排菌を防ぎます。治療が成功し回復した犬も、数か月から数年間、尿中にレプトスピラを排菌することがあるといわれています。

予防はワクチンですが、上述の様に全ての血清型に効果的ではありません。(ご心配な方にはワクチンのご用意はあります)現実的には、大雨の後に河川敷での散歩を控える、ドブネズミのいる場所に近寄らない、感冒症状がみられたら早期に受診することが重要です。


大雨の後の河川敷の散歩に注意して下さい

こちらもご参照下さい
No.433 肝細胞性黄疸
No.432 溶血性黄疸
No.431 黄疸 (Jaundice)
No.337 レプトスピラ症の発生続報
No.335 犬のレプトスピラ症 (Leptospirosis)
No.276 溶血性貧血 ( Hemolytic anemia)
No.144 播種性血管内凝固症候群 (DIC)
No.136 犬ウィルス抗体価検査 (Canine VacciCheck)
No.132 人畜共通伝染病2 (Zoonosis)
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