動物にとってもタバコが有害だとというと、ヒトの様にタバコの煙を直接または間接的に吸うことによる病害だろうと想像しがちですが、最も危険なことはタバコそのものを誤って食べてしまう(誤食)による中毒です。これをニコチン中毒と呼びます。
通常タバコには1本あたり9~30mgのニコチンが含まれています。より危険なものが電子タバコです。電子タバコ内の液体には80mg/mlのニコチンが含まれています。これらのタバコを誤飲した場合、迅速に体内に吸収され、しばしば数分以内で血中濃度はピークに達してしまいます。ニコチンは極めて毒性が高く、ヒトでは10mg/kgが最低致死量と言われていて、子供では1mg/kgのニコチン摂取で中毒が発症するとされています。動物での正確な致死量は不明ですが、ある研究では、タバコの銘柄にもよりますが、体重5kgの犬で1/4~1/3本で中毒、2本摂取すると致死量と言われています。
ニコチンを摂取すると脳や中枢神経、循環器系に対して、低用量では興奮作用、心拍数・血圧の増加、高用量では抑制作用、徐脈・低血圧、抑鬱症状がみられます。ニコチンの神経系や循環器系への作用は用量依存性です。大量摂取すれば症状は重くなります。
ニコチンは水溶性で吸収が早く、実際には摂取してから15~40分で、筋肉の震戦、高血圧、頻脈、頻呼吸、嘔吐、下痢、血便、血尿、流涎、虚脱、痙攣発作、呼吸麻痺などの症状が現れることがあります。どの中毒にもいえることですが、その時の食事の量や内容、体調や年齢などによっても吸収に差が出るので、摂取後3日間くらいは注意が必要です。
治療は、他の中毒の場合の処置と同様に、催吐剤、胃洗浄、活性炭による吸着、輸液、徐脈に対するアトロピン投与などを行います。タバコを誤食した時は迅速な対応が必要です。
催吐処置したタバコ
以下もご参照ください
No402 誤食をしたかもしれない時
No396 ユリ科の野菜の誤食
No350 誤食の予防
No.9犬、猫に与えてはいけない食品、薬