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No.202 リンパ腫 (Lymphoma)

リンパ腫とは血液中の白血球の1つであるリンパ球が腫瘍化したものです。リンパ節から発生する場合と、関係のない臓器から発生することもあります。また、血液をつくる骨髄から発生した場合は白血病と呼ばれ、同じリンパ系の腫瘍ですがリンパ腫とは異なります。一般的な腫瘍のようにしこりを作ることもありますが、しこりを作らないこともあります。リンパ腫は悪性腫瘍の1つで以前は悪性リンパ腫とも呼ばれていました。リンパ腫には様々な分類が存在し、悪性度が低いものから高いものまであり、治療法も異なりますが、基本的には無治療でいると、様々な臓器に浸潤していき悪性の挙動を示します。

代表的な分類に発生部位によるものがあります。

多中心型リンパ腫
体の表面にあるリンパ節が腫れるもので、主に下顎リンパ節や、頸部のリンパ節、膝窩リンパ節などが大きく腫れます。一般的にリンパ腫のときのリンパ節は、固く、真ん丸になります。症状は元気がなかったり、熱が出たりすることや、頸部のリンパ節が大きくなり気道を圧迫すると呼吸が苦しくなったりします。犬のリンパ腫では最も多いタイプです。

消化管型リンパ腫
腸やその近くのリンパ節などが腫れるものです。腸全体でリンパ腫の細胞が増殖する場合や、一部で増殖し、腫瘍状になり腸閉塞を起こすこともあります。症状は食欲がなくなり、消化や吸収が悪くなり、体重が減少します。嘔吐や下痢が続くこともあります。猫のリンパ腫で多くみられます。

皮膚型リンパ腫
皮膚にリンパ腫の細胞が入り込み、皮膚炎を引き起こします。皮膚の感染症を伴い発熱が認められたり、強い痒みを伴うことがあります。口腔内の粘膜に病変が出ることもあります。

鼻腔内型リンパ腫
鼻の中にできるリンパ腫で、そのほとんどは猫に発生します。鼻水、鼻血、くしゃみ、顔の変形などの症状があります。

前縦隔型リンパ腫
胸の中のリンパ節が腫れます。炎症やリンパ流の流れが悪くなることにより、胸の中に水が貯まると、呼吸が苦しくなったり、咳がでるようになります。FeLV(猫白血病ウイルス感染症)陽性猫に多いです。

上記以外の部位でもリンパ腫は発生することはあり、症状はその部位により様々です。

悪性度は、悪いものから順に、高グレード、中グレード、低グレードに分類されます。また、免疫学的には、リンパ球はT細胞とB細胞に分けることができます。T細胞性リンパ腫の方がB細胞性リンパ腫と比べて悪いことが多いです。

リンパ腫の診断は、基本的には、腫れているリンパ節に細い針を刺して、細胞を顕微鏡で確認します。 一般的に悪性度が高いタイプのリンパ腫は診断することができますが、悪性度が低いタイプのものでは細胞の検査だけでは診断が不十分な場合があります。 その場合には、組織の検査が必要になり、病変部の一部を外科手術で採取する必要があります。また、リンパ球は多彩な種類がありますが、リンパ腫に侵された部位では単一のリンパ球の集団(クローン)となり、遺伝子検査が診断に役に立つこともあります。

リンパ腫には抗がん剤が有効で、消化器型リンパ腫の腸閉塞、皮膚型リンパ腫が一部にとどまっている場合などの特殊な場合を除いては、手術より抗がん剤の治療が選択されます。悪性度の高いリンパ腫では、無治療の場合にはその生存期間はおよそ1~2ヶ月といわれ、早期の積極的な治療が必要になります。腫瘍細胞が抗がん剤に耐性を身につけることがあり、それを防ぐために何種類かの抗がん剤を組み合わせて使用します(多剤併用療法)。悪性度が低いリンパ腫には副作用が少ない抗がん剤や腫瘍に対して効果のあるホルモン剤を使用します。症状がない場合には、無治療で経過観察する場合もあります。また、リンパ腫の種類によっては放射線治療も有効です。

リンパ腫は悪性の経過を取ることが多く、治療の見込みが厳しいものですが、適切に治療を行うと完治する可能性があります(犬の多中心型リンパ腫の2年生存率20~25%)。また、残念ながら完治することができずリンパ腫によって寿命が決まってしまう場合でも、代替え医療などを利用して負担を軽減することで、生活の質(QOL)を改善することができます。


No.201 ウサギの胃のうっ滞・毛玉症

しぐさが可愛く、頭が良く、ヒトによく馴れ、鳴き声の問題もないウサギは、ペットとしてとても人気があります。ウサギによくある問題として、胃のうっ滞・毛玉症があります。
ウサギは毛づくろいによって、被毛を舐めとって飲み込んでしまいますが、嘔吐することができません。飲み込んだ被毛は、胃の中で食物と絡んでうっ滞が起こり、毛玉を形成します。食欲低下、腹痛、便の異常などの症状がみられ、急死することもあります。胃の運動機能を低下させるストレスや、異物の摂食、過食、運動不足、肥満なども原因となります。
診断は症状と身体一般検査に加えて、レントゲンや血液検査などを行います。軽症の場合は、点滴、胃腸蠕動促進剤、毛玉予防除去剤などを使用することによって回復しますが、重症の場合は開腹手術で毛玉を除去します。

日常の予防が大切です。以下のことを実践してみて下さい。
1.ブラッシングで、飲み込む被毛を最小限にする
2.運動をよくさせ、暇を持て余して過剰な毛づくろいをすることを避けることと、運動によって健康な胃腸蠕動を促す
3.イネ科の牧草(チモシー)を中心とした高繊維食を与え、胃腸蠕動の促進を促す。また、ペレットが好きなウサギはペレットを一気に過食する傾向があるため、給餌の回数を頻回にして1回の量を減らす
4.毛玉予防除去剤(ラキサトーンなど)を使用する

以上のことは、チンチラ、毛足の長い種類のハムスター、モルモットにもあてはまります。


ラキサトーン


No.200 半導体レーザー(Semiconductor laser)

半導体レーザーはダイオードレーザーとも呼ばれ、強い光のエネルギーを利用して、様々な治療を行うことが出来る医療機器です。出力や照射方法、またアタッチメントを変えることで様々な治療に応用できます。血行や細胞の活性化を促し、神経炎、関節炎、筋炎、皮膚炎、創傷などに対しての消炎、疼痛緩和、治癒促進に非常に効果的です。とくに神経や関節の炎症性疾患の治療において効果を発揮します。また、無麻酔では行えないような外科手術も、半導体レーザーを使用することで行える事もあるので、高齢や体が弱くて全身麻酔のリスクが高い動物、エキゾチックペットなどへの治療の幅が広がります。半導体レーザーによる治療は、動物に対して治療に伴う大きな苦痛を与えず、大きな副作用もありません。

獣医療界における主な適用には以下のようなものがあります。
・椎間板ヘルニアなどの神経疾患の疼痛の緩和、治癒促進
・関節炎の疼痛緩和、治癒促進
・創傷の治癒促進
・歯周病への抗菌、抗炎症作用
・小さな腫瘤の蒸散
・逆さまつげなどの脱毛
・手術時の血管シーリング(癒合・閉鎖)

半導体レーザーもにも欠点があります。眼に直接照射してしまうと白内障を誘発することがある、腫瘍に対しては大きくしてしまう場合があるなどです。しかし、きちんと使用する状況を選び、適切に使用すれば動物たちにとても恩恵の多い治療です。


No.199 肥満細胞腫 (Mastcytoma)

肥満細胞はアレルギーや炎症などに関与している細胞で、体の中のいろいろなところに存在します。太っている肥満とは全く関係ありません。この肥満細胞ががんになってしまったものが肥満細胞腫です。犬の肥満細胞腫は皮膚に発生しやすく、犬の皮膚の悪性腫瘍の中で最も多くみられます(16-21%)。皮下、筋肉、内臓(とくに肝臓と脾臓)にできることもあります。
肥満細胞は、ヒスタミンやへパリン、プロテアーゼなどの様々な物質を含んでいて、過度に触るとダリエ徴候といって、腫瘍が赤くなって大きくなり、体内で胃潰瘍が起こり、嘔吐、下痢、血便、食欲不振、血が止まりにくい、ひどい場合は胃穿孔などの症状が出る場合があります。
どの年齢でも発症し、性差もありません。パグ、ゴールデン・レトリーバー、ボストン・テリア、ボクサーなどが好発犬種です。多くは単発性ですが多発性の場合もあります(11-14%)。主な転移先は、局所リンパ節、肝臓、脾臓、骨髄です。一般的にマズルや口唇部に発生した場合は効率に転移を起こします。
肥満細胞腫の肉眼所見は様々で、偉大なる詐欺師と呼ばれています(写真参照)。見た目では全くわかりません。大きさも様々です。大きくなったり小さくなったりする場合もあります。
また、猫の場合、皮膚の肥満細胞腫の85%は良性腫瘍の挙動を示しますが、内臓型(脾臓に多い)では高率に転移します。
診断はFNA(穿刺吸引生検)といって注射針を腫瘍に刺して中の細胞を検査することによって行います。悪性度の判定は手術後の病理学的検査が必要です。

犬の肥満細胞腫の悪性度
グレード1:悪性度は低く、転移・再発は起こしにくい
グレード2:悪性度は高く、転移は起こす事あり、再発はしやすい
グレード3:悪性度は非常に高く、転移・再発は非常に起こしやすい

治療は外科手術が基本となります。完全切除が出来た場合は、グレード1.2なら他の治療は必要なく経過観察をします。不完全切除だった場合は、拡大再手術か放射線治療、グレード3の場合は完全切除ができていても、術後にイマチニブという抗がん剤を使用します。グレード3で不完全切除だった場合はイマチニブと拡大再手術もしくは放射線治療を併用します。

偉大なる詐欺師:肘の円形の腫瘍は、一見脂肪腫にも見えますが肥満細胞腫です


No.198 リラクゼーショントレーニング (Relaxation training)

リラクゼーショントレーニングは、犬専用のベッドやソファの上でリラックスして待つ練習です。やはりオペラント条件づけの正の強化を使います(→No16.→No17)。リラックスするにもトレーニングが必要だとは、犬にとっても大変な世の中になりました。前回のクレートトレーニング(→No197)と似ていますが、リラクゼーショントレーニングをしておくと問題行動の予防・治療ができます。

1.犬がリラックスできるベッドを用意して、ヒトの行き来があまり激しくない部屋の、犬が落ち着きやすい場所に設置する
2.ベッドの上におやつを数粒置き、犬がベッドに入ったり出たりするのを促す
×5~10回
3.ベッドの上で「おすわり」と「ふせ」を教える。教え方はおやつを使った通常の方法で良い
4.犬がベッドの上で「ふせ」ができるようになったら「まて」を教える。犬がふせたら、手をパーにして前に出し「まて」といって、3秒待たせたらおやつをあげる
×10回
5.手をパーにして前に出し「まて」といって、5秒待たせたらおやつをあげる
×10回
6.徐々に待つ時間を延ばしていき、15秒待てるようになるまで繰り返す
7.手をパーにして前に出し「まて」といって、飼主は後ろを振り向いて犬から目を離し、2秒後に犬をみて、おやつをあげる(眼を離しても待てる行動をさせる練習)
8.目を離して待てる時間を2秒→5秒→10秒→30秒→1分と延ばしていく
注)1分待たせるのはハードルが高いので、30秒を過ぎたら、振り返っておやつをベッドの方に投げ、「まて」のコマンドを繰り返し、ベッドにいることに対しての報酬を与える
9.「まて」といって、ベッドから数歩離れてみて、遠くからおやつを投げる

「まて」ということで、ベッドの上にいることを教えていきます。いきなり長時間は待てないので、待っている間はたまにおやつをベッドに投げたりして、ずっとベッドにいることをほめます。
勝手にベッドでリラックスしているときも、静かにほめてかわいがることで、ベッドの上でリラックスしておとなしくしていることは良いことであると学んでいきます。

今回の内容は、入交眞巳先生(米国獣医行動学専門医)の著書を参考にしています。


No.197 クレートトレーニング (Crate training)

基本的に犬はクレートが好きですが、時にはなかなか入ってくれない場合があります。そのときはオペラント条件づけの正の強化(→No16.→No17)を利用した、下記のような方法があります。

1.クレートの扉を開けて置き、クレートの入り口におやつを置いて、食べるのを静かに見守る
×10回
2.クレートの入り口のおやつを食べられるようになったら、クレートの入り口から5cm中へおやつを置く
抵抗なく食べる×10回
3.入口から10cmのところにおやつを置く。食べに行くのを静かに見守る
抵抗なく食べる×10回
4.さらに奥におやつを置き、同じことを繰り返し、一番奥に置いても抵抗なく食べるまで行う
×10回
5.完全に体をクレートに入れて、問題なくおやつを食べている間に扉を3秒だけ閉めて開ける
×5回
6.扉を5秒閉めて開ける
×5回
7.徐々に扉を閉める時間を延ばしていく。絶対に焦らずに少しずつ時間を延ばす
8.おやつを食べている間扉を閉めていられるようになったら、中にいる犬に扉の外からおやつをあげる
9.「ハウス」といってクレートに入る練習を始める。クレートを開けておき、「ハウス」といっておやつをクレートの中に入れる。
×10回
10.「ハウス」といったら、おやつを中に入れる前に自らクレートに入って待てるところまで繰り返し行う
11.「ハウス」といって自らクレートに入ったら、扉を閉めて外からおやつを与える
×10回
12.クレートの中に数分入ったままの状態を作り、30秒に1回おやつをあげてみる
×10回
13.クレートの中にいる間に、1分に1回おやつをあげる
×10回
14.ゆっくりすすめることで、「ハウス」といわれると自らクレートに入り、おとなしく待てるようになる

焦らずにチャレンジしてみてください。
今回の内容は、入交眞巳先生(米国獣医行動学専門医)の著書を参考にしています。


No.196 クレート (Crate)

ご自宅にクレートを用意している飼主さんは多いと思います。犬はもともとは洞窟で寝ていたといわれており、本来は周囲を囲まれたクレートで眠ることが好きです。外出のときだけの使用はもったいないです。クレートを有効活用すると、下記のようなメリットがあります。

・快適な寝床になる
・お留守番がしやすくなる
・しつけがしやすくなる
・良い意味でヒトとの距離感が取れる
・一人の時間が取れてストレスが減る
・問題行動の予防・治療ができる
・トイレとそうでない場所の区別がしやすくなる
・移動のときのストレスが減る
・車移動のときに、車内を歩き回らないので事故を防げる
・旅先でも同じ睡眠環境を保てる

クレートは犬にとって小さいながらも自分のお部屋、マイホーム、お城です。とても落ち着ける空間です。クレートの大きさは、寝床としての快適性を重視するなら、犬が体を伸ばして寝られるサイズが適当です。外出用に使うなら、クレート内で体をサポートしやすい、ややタイトなサイズが良いでしょう。犬が中でひと回りできる大きさがあれば十分です。移動が多い場合は、キャスター付きも便利です。可能なら、ハードクレートとソフトクレートの両方を用意すると便利です。何種類かのクレートを使い分けるのが理想です。
また、クレートに入っている犬に過度に干渉すると、せっかくの落ち着ける場所がだいなしになります。お掃除も犬がクレートにいないときにするなどの気遣いが必要です。夜間など、長い時間クレートにいるときには水分補給が出来ることも大切です。


No.195 シャンプーの方法

近年、犬や猫のシャンプー時の新しい考え方や、便利な商品がたくさん出てきています。

シャンプーの選び方
シャンプー剤は非常に多くのものが出回っています。ペットショップやネットで手に入るものに病院で処方される薬用シャンプーなどを併せたら数百種類となります。この中からそれぞれに適したものを探す時のポイントがいくつかあります。まずは『リンスインシャンプーはなるべく使わないこと』です。リンスインシャンプーは時間や手間は省けますが刺激は3~5倍と言われています。人でも以前ほど使用されなくなってきたのではないでしょうか。次に『ノミ取りシャンプーは使用しないこと』現在フロントライン始め、スポットタイプの駆虫薬の時代です。ノミ取りシャンプーの主成分のアレスリンよりも安全性が高いものばかりです。ノミ取りシャンプーを使うメリットは全くありません。

皮膚の状態には、普通肌(ノーマル肌)、乾燥肌(ドライ肌)、脂性肌(オイリー肌)、脂性肌でありながら乾燥しやすい肌の乾燥型脂性肌(オイルドライ肌)の4種類があります。皮膚にトラブルを抱えている場合は『皮膚がカサカサなのかベタベタなのか』『保水能力がきちんとあるか』を考えます。肌質によっては当然ながら使用するシャンプーは異なります。乾燥肌には保湿性の良いもの、湿性肌には脂をよく落とすものを、乾燥型脂性肌には脂をよく落とすシャンプーに保湿剤を組み合わせて使用します。薬用シャンプーといっても選択を間違えると逆効果になってしまいます。

良いシャンプー剤の条件
・NMF(アミノ酸)や細胞間物質(セラミド)を比較的多く残しつつ、皮膚の表面の汚れを洗浄できるもの
・低刺激性の界面活性剤を使用しているもの
・保湿成分(モノグリセリド、疑似セラミドなど)、両面界面活性剤など(補助界面活性剤など)を添加剤として含むもの
決められない場合はご相談下さい

シャンプーの流れ
1.ブラッシング:動物の毛は、頭→尾、体幹→肢先、といったような毛の流れを持っています。この流れに沿って、皮膚を傷つけないように優しくブラッシングをします。毛玉をなるべくとります。
2.体温より低い温度のお湯を使用し、全身をよく濡らします。お湯の温度が高いとセラミドが逃げてしまいます。優しくマッサージをしながら血流を促進します。5-10分程行います。15分以上行うと乾燥を助長します。この時に炭酸泉EXなどを使って炭酸泉にするのもオススメです。
3.きめ細かく泡立てたシャンプー剤で洗いはじめます。きめ細かい泡は汚れが吸着し、ゴシゴシ洗いをしなくて済みます。病変がある場合は患部から始めます。全身にシャンプーが行き渡たったら、そのまま5-10分浸透させます。泡立てるには泡シャンプーマシーンやジューサーを使うのもオススメです。
4.優しく洗い流し、必要なら保湿剤を使用します。
5.なるべく低温度のドライヤーで乾かします。ドライヤーもできるだけ低温度の方が皮膚や毛を痛めません。

乾燥と皮膚を傷付けることが大敵です。ゴシゴシ洗うこと、ゴワゴワしたタオルの使用、保湿されていない状態でのドライヤーなどは乾燥を助長するので控えてください。
頻度については、シャンプーを選べば毎日使用出来るのもありますが、目安として、暑い時期は週に1回、涼しい時期は2週に1回、皮膚炎の管理には週に2回程度がお勧めです。柴犬や猫ちゃんなど、シャンプーが大嫌いな場合はブラッシングを一生懸命にやっていただくことにより回数を減らせます。

こちらも参考にして下さい
→No12シャンプー
→No43 犬のスキンケア1
→No44 犬のスキンケア2
→No45 犬のスキンケア3
→No74 シャンプー後のトラブル


No.194 犬の僧房弁閉鎖不全症(Mitral regurgitation:MR)

左心房と左心室の間の2枚の弁が僧房弁です。僧房弁の変形が起こると、弁がしっかり閉じることができなくなり、本来、左心室から全身循環へ送り出されるべき血液の一部が左心房内に逆流してしまいます。そのため肺のうっ血が起こります。この肺のうっ血が進行すると肺水腫となります。小型犬に非常に多い病気です。初期段階では、軽度の心雑音だけで無症状な場合が多いですが、なるべく症状の軽いステージで発見し、治療が必要になったら内服薬を開始します。
心雑音強度は6段階に分類されています。Levine(レバイン)の分類と呼ばれています。聴診上重要な心音にはI音(僧房弁と三尖弁の閉鎖音)とII音(大動脈弁と肺動脈弁の閉鎖音)があります。
Levineの心雑音強度の分類
第I度/VI度:注意深い聴診のみによって聴き取れる雑音
第II度/VI度:聴診器を当てるとすぐ聴き取れるが弱い雑音、II音が聞こえる
第III度/VI度:II音が聞こえない
IV度/VI度:スリルがある(手で触って感じる心雑音)
第V度/VI度:聴診器で聴こえる最大の雑音で、聴診器を胸壁から離すと聴き取れなくなるもの
第VI度/VI度:聴診器を胸壁から離しても聴こえる強大な雑音

一般的に第III度/VI度以上の雑音があれば、心臓の詳細な検査が推奨されます。僧房弁閉鎖不全症についてはACVIM(アメリカ獣医内科学学会)が以下の様なステージ分類をしています。

ステージA:器質的異常なし(心雑音なし)
今後心疾患となる可能性あり(キャバリア、チワワ、マルチーズ、ダックスフントなど)
ステージB1:心雑音第III度/VI度、心不全の症状なし
心雑音はあるが結構動態に悪影響を与えていない初期の状態
心拡大なし
ステージB2-Mild:心雑音第III度/VI度
血行動態に悪影響を与えている可能性
軽度な心拡大あり
StageステージB2-Treatment:心雑音第III度/VI度
血行動態に悪影響を与えている
心拡大あり
ステージC:心不全兆候の既往あり(肺水腫による呼吸困難など)
現在、心不全(うっ血性心不全、肺水腫)の治療中
治療してもStageBに戻ることはない
ステージD:標準的な治療に反応しない進行した状態
繰り返すコントロール困難な肺水腫
心拡大の判定には以下の3つを測定します
1.LA/Ao ratio(左心房と大動脈径の比)>1.6
2.LIVIDD(拡張末期左心室内径)N>1.7
3.VHS(胸骨心臓サイズ)>10.5
(1.2.は超音波検査で、3.はレントゲン検査で測定)

ACVIMの指針 ではStageB2-Treatmentの段階からは投薬が必要です(他の心臓病の兆候、例えば高血圧や不整脈の有無などによっても異なります)。現在では施設は限られますが外科手術も選択肢となります。

こちらもご覧ください
No.29 心臓疾患時の兆候1
No.30 心臓疾患時の兆候2
No.109 高齢動物の心疾患


No.193 白内障 (Cataract)

多くの哺乳類にはヒトと同様に白内障が発症します。眼の中の水晶体というところの、一部もしくは全部が白濁する病気です。進行すれば視力は低下し、最後には失明する病気です。

白内障の発症の詳しいメカニズムは分かっておりません。原因としては、先天性に発症する先天性白内障、他の病因で発生する後天性白内障に分類されます。先天性のものは主に遺伝が関与していて、アメリカン・コッカー・スパニエル、プードル、ビーグル、柴犬などに若齢から白内障がみられる場合があります。後天性の白内障には、老年性の変化(8歳くらいからみられる場合もあります)の他、糖尿病などの代謝性の変化によるもの、外傷性、中毒性、進行性網膜萎縮などの網膜の疾患によるものがあります。

臨床的には、水晶体の混濁程度により「初発期白内障」「未熟期白内障」「成熟期白内障」「過熟期白内障」に分類され、初発期白内障では視力はさほど障害されませんが、未成熟白内障以上の白内障では視力がかなり障害されてきます。

治療法には「内科療法」と「外科的療法」があります。内科療法(点眼薬)は白内障の初期には進行を遅らせることができますが効果は限定的です。視力が障害されている白内障には、一般的な白内障用の点眼薬では視力を回復させることはできません。未熟期白内障以上は外科手術が推奨されます。視力が障害された目の水晶体を摘出し、眼内レンズを挿入します。ヒトの場合は日帰り手術が受けられ、保険も効くので、比較的早期に手術が行われますが、高齢の動物の場合、「もう年だから」で済まされることが多くみられます。現在では、犬や猫の白内障の手術は成功率も高く、広く行われるようになってきています。

犬の過熟期白内障