No.491 マラセチア (Malassezia)

マラセチアは自然に存在する酵母型真菌の一種で、通常はヒトや動物の皮膚や外耳道に生息しています。普段マラセチア自体が問題を引き起こすことはありませんが、異常に増殖した場合、菌体成分や代謝産物が皮膚炎や外耳炎を引き起こします。またマクロファージなどの抗原提示細胞がマラセチアを貪食することで、二次的にマラセチアに対するアレルギー性皮膚炎になることもあります。湿度の高い日本では増殖しやすく、とくに梅雨の時期には注意が必要です。

脇や股、頸の腹側などの間擦部に症状が出やすく、脂漏によってベタベタする、紅斑、痒み、色素沈着、脱毛落屑、皮膚の肥厚、甘酸っぱい臭気などが特徴です。外耳炎の場合は黒っぽく脂っぽい耳垢が溜まります。爪周囲炎を引き起こすこともあり、その場合は爪の表面が脂っぽくなり、色素脱や発赤が見られるようになります。通常の真菌症と違って他の個体へはうつりません。

好発犬種は、シーズー、ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア、コッカー・スパニエル、プードル、ダックスフンド、ボクサー、キャバリアなどです。猫でも起こります。猫の場合は外耳炎が多いです。遺伝的な原因が示唆されていますが、高温高湿度の環境や肥満も悪化因子です。また犬の場合は、甲状腺機能低下症がある場合もあります。

診断は、症状と病変部角質または耳垢の押捺塗抹検査(スタンプ検査)で行いますが、顕微鏡の検査ではっきりせず、培養検査をしないとわからない場合もあります。

治療は、薬浴、抗真菌薬、マラセチアに対するアレルギーがある場合はステロイド剤を投与します。生活環境の整備、肥満の場合は減量なども重要です。マラセチア性皮膚炎や外耳炎は、そのままにしてしまうと慢性化してしまうことも多いです。しっかりした対処が必要です。


マラセチア

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