No.472 ヒトの薬で犬や猫にとって危険なもの

ヒトの薬やビタミン剤の中には、犬や猫にとって危険なものも多いです。ASPCA (米国動物虐待防止協会 中毒事故管理センター)が発表した危険ランクの高いものをご紹介します。

1.非ステロイド系抗炎症薬 (NSAIDs)
イブプロフェン、ナプロキセンなどで、症状は胃腸の潰瘍、猫は腎臓にもダメージを受けます。 少量でもとても危険です。約4.5キロの犬の場合4錠で深刻な腎臓障害がでるという報告があり、鎮痛、解熱剤などで、多くの市販薬に使用されています。有名な薬はエスタックイブ、コルゲンコーワなどです。

2.アセトアミノフェン (Acetaminophen)
犬は肝障害、服用量によっては赤血球がダメージを受けます。猫では赤血球にダメージを受け、酸素供給能力に支障をきたします。特に猫に影響が出やすく、効き目の強いタイプの錠剤1錠で致命傷となります。解熱鎮痛薬の1つで、発熱、寒け、頭痛などの症状を抑える解熱剤、鎮痛剤として用いられる薬物の主要な成分です。バファリン、ルル などにも入っているメジャーな鎮痛剤の成分です。

3.合成エフェドリン、偽エフェドリン、プソイドエフェドリン、シュードエフェドリン (Pseudoephedrine)
心拍の増加、血圧・体温の上昇を起こします。鼻詰まり緩和のための薬に入っています。花粉症対策のための薬などにも使用されている場合があります。

4.抗うつ剤、抗うつ薬 (Antidepressants)
嘔吐、無気力、高体温、血圧と心拍の増加、失見当、鳴く、震え、発作などを起こします。少量でも危険です。当院では1番多い中毒です。

5.ビタミンD誘導体 (Vitamin D derivatives)
嘔吐、食欲不振、腎不全のによる頻尿などが起こります。皮膚疾患の治療の1つである皮膚外用療法に用いられる医薬品です。

6.抗糖尿病薬 (Anti-diabetics)
血糖値の低下による発作が起こります。

7.メチルフェニデート 興奮剤 (覚醒剤Methylphenidate for ADHD)
ナルコレプシーや18歳未満の注意欠陥多動性障害(ADHD)の患者さんに対して使われるアンフェタミンに類似した中枢神経刺激薬です。心拍の増加、血圧・体温の上昇、発作、呼吸停止が起こります。

8.フルオロウラシル (Fluorouracil)
犬で、厳しい嘔吐、発作、心臓停止を起こします。フッ化ピリミジン系の代謝拮抗剤で、抗悪性腫瘍薬です。犬にとってはわずかでも危険です。

9.イソニアジド (Isoniazid)
犬で厳しい発作による死亡の恐れがあります。結核の予防や治療の第一選択薬である有機化合物で、とくに犬は代謝できないため危険です。

10.バクロフェン (Baclofen)
症状は、鳴く、発作、昏睡(死亡の恐れ)です。中枢神経系を弱める筋弛緩薬で、神経・細胞膜などに作用して筋肉の動きを弱めます。

7以下は、通常の生活ではまず無い事故でしょうが、市販薬の風邪薬、花粉症の薬、抗精神薬には十分に注意して下さい。万が一犬や猫が摂取してしまったら、様子を見ずにすぐに受診して下さい。


市販薬にも注意して下さい

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