今回は犬の攻撃性行動についてです。
攻撃対象による分類
・身近なヒト・家族に対する攻撃性行動
・見知らぬ人に対する攻撃性行動
・犬どうしの攻撃性行動
・他の動物に対する攻撃性行動
・非生物に対する攻撃性行動
動機付け・対象による分類
・自己主張性・葛藤性攻撃行動
・同種間攻撃行動
・遊び関連性攻撃行動
・捕食性攻撃行動
・恐怖性・防御性攻撃行動
・縄張り性攻撃行動
・所有性攻撃行動
・食物関連性攻撃行動
・転嫁性攻撃行動
・母性攻撃行動
・疼痛性攻撃行動
このようにたくさんの分類がされていますが、心の中のことなのでなかなか簡単には答えに結びつかないことも多いです。実際には以下のような順で鑑別していきます。
攻撃性行動の鑑別診断
まずは体の病気じゃないかを鑑別します。
生理学的な問題
・痛み
・内分泌疾患(甲状腺機能低下症など)
・脳腫瘍
・てんかん
・水頭症
・感染性脳疾患
これらが否定されたら、次に行動学的な問題を考えます。
行動学的な問題
・不安
・恐怖からの攻撃性
・学習(負の強化)
・関心を引くための行動
・認知機能不全症
・常同障害
体の病気があれば、もちろん先にその病気の治療をします。しかし身体の病気が理由で問題行動が生じている場合は、その病気が治っても問題行動が残ってしまうことが少なくありません。このような場合と行動学的な問題がある場合は、基本的には拮抗条件付けと系統的脱感作法で対処します。
拮抗条件付け
拮抗条件付けとは、感情と印象の修正をおこなう手続きのことです。良くない感情を持っている刺激(嫌悪刺激といいます)と良い感情を持っている(快刺激といいます)を順に提示することで感情を変化させる学習です。主に恐怖刺激に対して使います。
例えば、耳掃除が嫌いで、耳を触られるだけで人を攻撃してしまう犬がいたとしましょう。まずは耳に触れるか触れないかの刺激を与え(嫌悪刺激)、我慢出来たらおやつ(快刺激)、だんだんと刺激を上げ、最終的には耳掃除(嫌悪刺激)の後におやつ(快刺激)というやり方です。
系統的脱感作法
系統的脱感作法は、簡単にいうと慣らしていくことです。刺激に対して反応しない、慣れていくことを「馴化」と言います。この馴化を起こしやすくするためにこの方法を用いることが多いです。刺激を小さいところから徐々にあげていき反応しなくなるように慣らしていきます。不安や恐怖反応に対して用いる方法で、拮抗条件付けを一緒に用いると効果的です。
例えば、雷の音でパニックになってヒトを咬んでしまう犬に、録音した雷の音を小さい音量から徐々に大きな音にして聞かせます(系統的脱感作法)。この時に上手くおやつを与えます(拮抗条件付け)。
現実的には時間がかかることが多いです。あまりに病理が深い場合は、心の問題でも、薬を使うこともあります。とにかく一番いけないのは体罰です。体罰は問題を深刻にします。
今回のメルマガは、入交眞巳先生(日本ヒルズコルゲート株式会社)のセミナーを参考にしています
こちらも参考にして下さい。
No14学習法その1馴化、洪水法、脱感作
No15学習法その2古典的条件付け
No16学習法その3オペラント条件づけ1
No17学習法その4オペラント条件づけ2 学習法まとめ