No.332 肛門腺 (Anal glands)

肛門を時計に見立てて4時と8時の位置に一対の袋があり、肛門腺と呼ばれています。そこに貯留する分泌物は通常は興奮時や排便時に、肛門に入ってすぐの肛門腺の出口から排出されます。色や形状は様々で、透明、黒、緑色だったり、液状、泥状や固い固体に近いものもあります。分泌物は独特の強い臭いを出します。スカンクのおならで有名です(実際にはおならではありませんが)。

肛門腺の分泌物は中~大型犬の場合、排便と一緒に絞られて排出されるので大きな問題になることは少ないですが、小型犬や猫では、うまく分泌物が排出されずに肛門嚢内に残存することで、違和感や痛みを感じたり、炎症を起こしたり破裂したりすることがあります。そのため、定期的に肛門腺を出して予防する必要があります。目安は月に1度程度、中~大型犬でも溜まっている場合は絞った方が良いです。

肛門腺が溜まった時の症状は、
・お尻をこすりながら歩いている
・よくお尻を噛んだり舐めたりしている
・お尻付近を触ると怒る
・排便時に痛がる
・肛門付近から分泌物が出ている
などがあります。

絞り方は、

1.尻尾を上げる:尾をまっすぐ上に持ち上げます。

2.肛門嚢の位置を確認:肛門嚢は肛門の4時と8時の位置にあります。

3.絞る:肛門嚢の位置が確認できたら、その少し外側に指を置き、やや頭側に指を押し込みます。押し込んだところで肛門嚢を指で挟み込む感覚で肛門側に分泌物を出します。

強い力は必要ありません。慣れないうちは片側ずつやってみて下さい。分泌物は臭いが強く、こぼれる場合もあるので、お風呂場や汚れても大丈夫な場所で行うのがおすすめです。上手く出ない場合や出血が見られる場合、傷になっている場合、痛みがある場合は、無理をせずに診察を受けて下さい。

当院では、予防注射と犬の場合フィラリア予防(犬の場合)をきちんとしていただいているワンちゃん猫ちゃんには、肛門腺の処置は爪切と共に無料で処置させていただいております。上手く行かない場合はお気軽にお声掛け下さい。


No.331 子宮蓄膿症(Pyometra)

子宮蓄膿症は子宮内に膿が蓄積されて起こる疾病です。発情期を過ぎたあたりに膣から子宮の中に、大腸菌、ブドウ球菌などの細菌が入り込んで生じる子宮内膜炎が引き金となります。細菌感染が体の免疫機能を上回って、炎症で生じた膿が子宮内に大量に蓄積されてしまった状態です。さらに、菌そのものや、細菌がつくる毒素が体の中を廻り、最終的にはDIC(→No144種性血管内凝固症候群)、敗血症や腎、肝不全をはじめとする多臓器不全などの合併症から危険な状態に陥ります。また、その過程で拡張した子宮が破裂し、膿が腹腔内に漏れて腹膜炎を生じてさらに緊急化することもあります。

子宮蓄膿症は、6歳以上の不妊手術を受けていない雌犬に4頭に1頭程度の確率で生じます。特に中高齢犬で、今まで出産したことがない犬、または長く繁殖を停止している犬に多いと言われています。犬以外にも、猫、ウサギ、フェレット、ハムスター、ハリネズミなど、多くの哺乳類でみられます。

原因は、発情後1~2ヶ月間の黄体期に出る黄体ホルモン(プロジェステロン)にあるといわれています。プロジェステロンには細菌感染の温床になる子宮内膜の増殖、子宮の出入り口となる子宮頚管を閉ざす役割、さらに体の免疫力を下げてしまう働きがあり、これらの要因が組み合わさって子宮蓄膿症が生じます。排卵後には犬の体は妊娠、出産の準備のためプロジェステロンが分泌され始め、これが子宮壁の嚢胞性過形成(子宮内膜が厚くなり、水膨れしたような状態になること)を引き起こします。この状態の子宮粘膜は細菌感染しやすい環境になっています。子宮内に入り込んだ細菌は健康なら免疫機能によって自然に排除されますが、黄体期には精子を受け入れられるよう緩んでいた子宮頚管が閉ざされるため、細菌感染による炎症産物が子宮内から排出しにくくなり子宮蓄膿症となります。

診断は、発情の1-2ヶ月後の膿の様な帯下、多飲多尿、お腹が膨らんできたなどの症状と、レントゲン検査、超音波検査で行います。また、全身状態を把握するための血液検査も重要です。子宮蓄膿症に類似の病気として、子宮水腫、子宮粘液症という子宮内に膿ではない体液や粘液状のものが貯まってしまうものや、子宮の腫瘍などとの鑑別が必要です。乳腺腫瘍(→No68乳腺腫瘍1No69乳腺腫瘍2)を併発している場合も多いです。

子宮蓄膿症の治療の基本は外科手術です。卵巣子宮摘出術を行って、外科的に膿が溜まった子宮と原因となる卵巣を取り除くことがベストです。しかし、合併症を生じていることも多く、通常の卵巣子宮摘出術(→No286不妊手術.No125去勢手術・不妊手術)と比べてリスクの高いものとなりがちです。DICやPre-DICの状態では、輸血(No173犬の血液型と輸血No174猫の血液型と輸血)の用意が必要な場合もあります。内科的治療に関しては、プロジェステロンの働きをブロックすることを目的とするアグレプリストン(Alizin)が欧米で承認を受けて使用されるようになってきていますが、日本ではまだ承認されていません。

予防は若い時期の不妊手術です。繁殖の予定がない場合は不妊手術を受けましょう。

子宮蓄膿症の子宮(手術時の写真が出ます。苦手な方はクリックしないで下さい)


No.330 眼瞼腫瘍

犬の眼瞼(まぶた)に発生する腫瘍の20~30%は組織学的に悪性と言われていますが、逆に言えば大半(80~90%)のものが臨床的に良性です。性差はなく、どちらかというと上眼瞼に発生しやすいです。好発犬種としては、ビーグル、シベリアンハスキー、イングリッシュセッター、プードル、ジャックラッセルテリア、ラブラドールレトリバー、ゴールデンレトリバーといわれていますが、どの犬種でも発生します。もっとも多いものはマイボーム線由来の良性の皮脂腺腫です。また、犬の眼瞼腫瘍は局所再発はみられますが、他部位への転移は稀です。

猫での眼瞼腫瘍の発生は少ないですが、発生したら、扁平上皮癌、肥満細胞腫、メラノーマなどの悪性のものである確率が高いです。とくに白い猫に多いです。

治療は外科的な切除と凍結手術が中心となります。眼瞼部はあまりサージカルマージンは取れませんが、犬での報告で、再発率は外科切除で15%、冷凍外科手術で11%、再発するまでの期間は外科手術で28.3ヶ月、冷凍外科手術で7.4ヶ月であったというものがあります。

眼瞼の1/4-1/3くらいまでの大きさなら手術は大変ではありませんが、それ以上になると、他の部位の皮膚で眼瞼を形成する必要があり、手術が頻雑になります。とくに腫瘍が角膜表面に当たってしまっている場合は早目の治療が必要です。眼に限らず、天然孔(眼、耳、鼻、口、外陰部、肛門)の近くの腫瘍は、なるべく小さなうちに対処する必要があります。


犬の上眼瞼の腫瘍


No.329 便秘はなぜ悪い

便秘の時には、気持ち悪さや腹痛を伴うことが多いです。このような便秘時の症状を便秘型IBS(過敏性腸症候群) といいます。しかし、それ以外にも便秘は体にダメージを与えます。

腸の働きは、食物から栄養分を吸収し、不要なものを便として排泄するのが最も重要な機能です。しかし、ヒトの研究ですが最近わかってきたことがあります。腸は「第2の脳」とも呼ばれ「考える臓器」でもあるのです。脳内の神経伝達物質であり、精神を安定させる作用を持つ、セロトニンの90%以上が腸で作られるという報告もあります。また、ドーパミンという快楽に関係した作用を持つ神経伝達物質も、50%程度が腸で作られるとされています。ストレスなどで腸の働きが落ちるとセロトニンやドーパミンの分泌が低下します。そうすると、鬱病などの心の病気になってしまいます。また、ヒトの腸内には約1億個以上の神経細胞があり、網目状のネットワークを構成しています。この神経細胞は脳からの司令を受けることなく機能しています。すなわち腸には自律機能があります。

便秘の定義はまだきちんと決まったものがありません。しかし、食べたものが消化され排便されるまでの時間はヒトでは24時間が目安ですから、1日1回以上の排便がなければ厳密な意味では便秘ということになります。便が長期間腸内に留まると腸内細菌叢(腸内フローラ)に悪影響を及ぼします。腸内細菌叢は、乳酸菌、ビフィズス菌など約5000種類の菌が600~1000兆個あり身体を守っています。腸内細菌叢の具体的な働きは、免疫力を高める、感染防御、消化吸収の援助、ビタミンの合成、腸管運動を促進させるなどです。また、ヒトが持つ免疫細胞の70%以上が腸に存在していると考えられていて、いわゆる善玉菌が減り悪玉菌が増えると、発癌物質、発癌促進物質、アンモニア、硫化水素、メタン、活性酸素などの有害物質を発生させます。これらはIBSの原因にもなります。便秘の時のおならが臭いのもこのせいです。そして、これらの有害物質が腸壁から吸収され、下痢や便秘の他にも、肌荒れや疲労感、アトピー、口臭、高血圧、糖尿病、肥満、炎症性腸疾患、癌などを引き起こすと考えられています。動物での研究はまだまだですが、おそらくヒトと同じ様なことが起こっていると推察されます。


図はNexWelさんのウェブサイトから引用

こちらもご参照下さい
No314慢性腎不全(CKD)と便秘
No304糖尿病
No280リンパ球形質細胞性腸炎(LPE)と炎症性腸疾患(IBD)
No271猫の便秘
No259高血圧
No163脳腸相関
No164脳-腸-微生物相関


No.328 尿石症:腎・尿管・膀胱・尿道結石

腎臓・尿管・膀胱・尿道の尿路系に結石ができることを尿石症といいます。結石がどこに形成されるかによって名称が異なり、腎臓にできれば腎結石、膀胱と腎臓をつなぐ尿管内にできれば尿管結石(→No158猫の尿管結石)、膀胱内にできれば膀胱結石、尿道内にできれば尿道結石と呼びます。結石の種類にはいくつかあり、ストラバイト、シュウ酸カルシウム、尿酸アンモニウム、シスチンが代表的ですが、これらが混合してできる場合もあります。犬猫だけでなく、どの動物種でも起こる可能性があります。

多くは遺伝的な素因が原因となりますが、活動性の低下や肥満、栄養摂取、飲水量にも関連していると考えられています。また尿路感染症や副腎機能亢進症、門脈体循環シャントなど多くの病気とも関連性が知られており、特に尿路感染症は併発していることが多いです。また尿道結石の場合、ほとんどがオス犬やオス猫で見られます。これはオスの方がメスよりも尿道が細いため、結石が尿道につまりやすいためです。

尿石症における主な症状は、血尿や排尿痛、排尿困難など排尿に関わる問題が挙げられます。しかし腎結石や尿管結石などの場合は特定の症状として見られることは少なく、状況によって元気食欲の低下や発熱、腎障害などが見られることがあります。「おしっこが出ない」「何度もトイレに行く」「排尿時に変な鳴き声をする」「血尿がでる」といった症状があれば膀胱結石や尿道結石などの可能性があります。「食欲がない」「元気がない」「お腹を痛そうに丸めている」といった症状は他の病気にも当てはまりますが、尿管結石などによる腹痛や腎結石の可能性も考えられます。無症状のこともあるので注意が必要です。

診断は、症状、尿検査、画像検査、血液検査によって行います。尿検査では、尿中に結石の成分である結晶や細菌感染、炎症の有無などを見ることができます。特に膀胱結石や尿道結石などの下部尿路の結石は見つけやすいです。画像検査では、腹部のレントゲン検査や超音波検査を行うことで、腎臓、尿管、膀胱、尿道内のどこに結石が存在するのかを判断することができます。血液検査では、結石によって腎不全や炎症、感染などを引き起こしていないか、他の病気が隠れていないかを評価することができるため、全身状態の把握を行うことが可能です。

結石の存在する場所によって治療法が異なりますが、多くは結石を外科的に摘出する必要があります。ただし、ストラバイト結石などは大きさにより、食事療法による内科治療で結石を溶かすことができることもあります。そのため結石の種類を同定することは重要です。どんな結石の場合も食事療法の併用が重要となります。腎結石の場合は、症状や悪影響を認めない限り、食事療法のみで経過観察を行うことも多いです。尿管結石の場合は、腎不全を引き起こし命に関わることもありますので、内科的治療への反応が悪ければ、早期の外科治療が必要です。膀胱結石の場合は結石の大きさや症状によって外科的に摘出する場合と経過観察をする場合があります。尿道結石の場合は、尿が出なくなっている場合が多いので、緊急の処置が必要です。

予防は水分をしっかり取ること、尿を我慢させないこと、食事の見直し、定期的な健康診断です。


犬の膀胱結石


No.327 ウサギの骨折

ジャンプ力に優れているウサギの骨は、ヒトや犬、猫などと比較するとずっと軽くて薄く、脆いです。体重に対して骨の占める割合を比べると、人間は18%、犬は14%、猫は13%に対し、ウサギは7%です。ウサギは、外敵から逃げやすくするために骨が軽くなったといわれています。そのため、外傷では骨折がとても多いです。特に肢や腰の骨の骨折が多いですが、全身の骨が脆いのであらゆる骨を骨折します。

骨折の原因は、高い場所からの落下、着地の失敗、誤ってヒトに踏まれる、ケージやドアに挟まる、すのこに肢を引っ掛ける、抱っこを嫌がり暴れるなどですが、筋肉量に対して骨の量が少ないため、自分の筋力(いわゆる足ダンでも)で骨折を起こしてしまうことがあります。また、病気(上皮小体機能亢進症や骨粗鬆症、腫瘍など)に付随して起こる場合もあります。

治療は、骨をピンやプレート(→No180ロッキングプレート)で固定する手術、バンテージでの固定、ケージレスト(動きを制限すること)などを組み合わせて行います。骨折した部位や受傷部位の状態、うさぎの年齢や一般状態などにより、どの治療方法を取るかを判断しますが、体が小さい場合が多く、プレートなどの強固な固定が可能なインプラントが使えない場合があるのと、骨が脆いため、犬や猫よりも治療が難しい場合が多いです。

骨折の治療はウサギに限らず、最初の2週間がとても重要です。自己治癒能力で、骨折を治すための細胞や蛋白がどんどん産生されるのが初めの2週間です。また、術後の安静も重要です。ウサギは穴を掘るのが好きなため、とくに前肢の骨折では、環境の整備やきちんとした看護が必要です。繰り返しになりますが、骨が脆いため、犬や猫なら2-3ヶ月くらいで完治するものがウサギはそれ以上かかります。最悪の場合断脚の可能性もあります。


ウサギの橈尺骨折 ピンディングでの治療


No.326 口蓋裂(Cleft palate)

口蓋裂(こうがいれつ)とは、上顎に亀裂があり、口腔と鼻腔がつながってしまってる状態です。 鼻水、くしゃみ、咳、口臭、食欲不振などの症状が見られます。 子犬・子猫の場合は、ミルクなどがうまく飲み込めずに肺に入ってしまい、呼吸困難や誤嚥性肺炎などを引き起こすことがあります。長く放っておくと副鼻腔炎(→No312副鼻腔炎)を発症する場合もあります。

口蓋裂の原因は先天的な形態異常のことが多いです。 先天的な発症の原因としては、胎児のころに母犬や母猫への薬物投与が行われたことやウイルス感染したことなどが挙げられますが、 遺伝性の要因が多いと考えられています。口蓋裂がある場合は、他の先天性の異常がある場合も多いので注意が必要です。後天的な発症の原因としては、交通事故や落下事故、感電などが挙げられます。

治療は、外科手術によって裂けている口蓋をふさぎます。離開している場所や大きさ、年齢などにもよりますが、口蓋裂の手術は難しく、中途半端に行うと再発します。通常は、硬口蓋でフラップを作り口蓋裂を閉じます。それでもダメな場合は、抜歯をして唇の粘膜の移植をします。術後すぐは痛みも強く、すぐに食事はできないので、食道瘻チューブや胃瘻チューブ(→No325胃瘻チューブ)から与えます。入院も7-10日間程度は必要です。複数回の手術が必要になることもあります 。飲水や食事のたびに苦しいので、早目に手術をしてあげたい疾患です。誤嚥性肺炎や副鼻腔炎を予防するためにも早期治療が必要です。


猫の口蓋裂


左唇の粘膜の移植手術後


No.325 胃瘻チューブ (PEGチューブ)

何らかの理由で食事が取れなくなった動物に対し、体の外から胃に直接食べ物を運ぶ道を胃瘻(いろう)と呼び、そのチューブを胃瘻チューブといいます。口や喉の病気で物理的に食べることが出来なくなってしまって長期間食事が出来ない場合や、大きな病気で食欲がなくなってしまい治るための栄養が足りなくなる場合などに、体に充分な栄養を与えるために行う治療です。化学療法を行う場合も設置することがあります。

胃瘻とは直接胃に設置するチューブ全般を指しますが、PEGとはPercutaneous Endoscopic Gastrostomyの略であり、消化管内視鏡を用いて設置する胃瘻チューブのことを指します。全身麻酔は必要ですが、通常15-20分で設置可能です。消化管内視鏡を用いずに開腹手術にて直接チューブを設置する場合もあります。

病気と闘うためには栄養が必要です。動物が十分に食事を取ってくれている場合には栄養が足りていますが、大きな病気と戦っている時に食欲が減ってしまうことは少なくありません。動物がご飯を食べることを嫌がる場合にはヒトが助けてあげなくてはいけません。強制給餌では、流動食などを動物の口に運んであげて食べさせる必要がありますが、なかなか食べてくれないことも珍しくありません。一生懸命食べて貰おうとしても逃げてしまったり、嫌がって口を閉ざしてしまうこともあります。口や喉の病気などでは飲み込むことが出来ない場合もあります。そんな場合にはチューブを使って直接胃に送ってあげることで必要な栄養を取ることが出来ます。

胃にチューブを設置するということに抵抗感がある飼主さんは多いと思います。しかし、胃瘻チューブによって動物は口からイヤイヤご飯を食べなくても栄養を取ることが出来ます。動物はじっとしているだけですみますし、飼い主さんも嫌がる動物に無理をせずに治療を行うことが可能となります。同時に薬も入れることも可能です。全身麻酔の負担はありますが、それを乗り越えてしまえばメリットの方が多いです。胃瘻チューブの設置は積極的な治療のために行うことであり、”無理な延命”のために行うものではありません。病気と闘っている動物を助けてあげるとても大事な方法の1つです。


胃瘻チューブ


No.324 ヒョウモントカゲモドキ (Leopard gecko)

ヒョウモントカゲモドキの人気がすごいです。女優の新垣結衣さんも飼っているそうです。ヒョウモントカゲモドキはレオパードゲッコー(レオパ)とも呼ばれ、全長18-25cm、体重45-60gの小型のトカゲで、夜行性、元々は乾燥地帯の地上にハーレム(♂1頭に数頭の♀)で住んでいて、至適温度は昼24-28℃、夜18-24℃で、湿度は40-60%です。卵生(楕円形2個/回、年に最大6回)、昆虫、節足動物、小型両生類・爬虫類を食べる動物食です。水分は夜霧や朝霧で取ります。舌が長く、自分の眼も舐めることができます。腋窩にポケットがあります(役割はわかっていません)、寿命は10-15年くらいです。尾が太い時は健康状態が良いです。性格は温和で咬みつくことがなく、動きも早くないのでペットに向いています。

以下の様な疾患が多いです。
・先天性のブドウ膜炎、緑内障
・床材等の誤食
・低カルシウム血症:チックや異常行動が出ます
・総排泄腔脱、直腸脱:消化管のうっ滞、誤食、MBD(→No323代謝性骨疾患)も原因となります
・脱皮不全:乾燥しすぎる環境が原因になることが多いです。指先の壊死や眼瞼の異常が出ます
・顔の膿瘍(→No311齧歯類と爬虫類の膿瘍)
・ヘミペニス脱
・卵胞のうっ滞・卵塞:栄養が良すぎて、産卵を繰り返すとなりやすいです
・クリプトスポロジウム症:腸炎を起こし痩せていきます
・尾の自切:栄養状態が悪いと切れやすいです
ほとんどの疾患が生活環境や食事を気を付けることで予防できます。

ヒョウモントカゲモドキは飼いやすいです


No.323 代謝性骨疾患 (Metabolic bone disease:MBD)

代謝性骨疾患は爬虫類・両生類でよくみられます。様々な理由により体内のカルシウムが不足して起こりますが、主な原因は、カルシウム・ビタミンDの不足、紫外線不足、リンの過剰摂取です。カルシウムは、丈夫な骨や甲羅の形成に必要不可欠なミネラル分ですが、爬虫類・両生類飼育において不足しがちです。体は血中のカルシウム濃度が低下すると、骨からカルシウムを放出して不足分を補います。骨から放出した分のカルシウムを正常に再供給できない場合、低カルシウム血症による症状と、骨の変形が起こります。

低カルシウム血症による症状
・食欲不振
・活力の低下
・チック(急に出現する運動や音声が不随意に繰り返し出現する状態)
・痙攣
・異常行動
・総排泄腔脱
・便秘
・卵塞

骨の変形
・各部の骨の変形(とくに下顎骨)
・嘴の変形(受け口)
・病的骨折
・骨が太く脆くなる
・歩き方がおかしくなる
・甲羅の変形(亀)
・甲羅が柔らかくなる(亀)

治療はカルシウムとビタミンの投与、紫外線の照射です。状態が上がってくるまでは、強制給餌や点滴なども必要です。予防には適切な食事内容を考えることが第一です。主にカルシウムやビタミンDといったサプリメントを上手に使うことが重要です。このほか、有効な紫外線の照射や適切な飼育温度を保つこと、十分に運動できるスペースを確保することも大切です。


上腕の病的骨折