認知症のときの対応を具体的に考えてみましょう。今回は夜泣きです。
犬では(とくに日本犬)認知症が進行すると昼夜が逆転してしまい、夜中に単調な声で意味もなく鳴き続ける、制止してもやまないといった状態になってしまうことがあります。都会では近所の方々を巻き込んでしまう場合もあり大きな問題です。
まず最初に考慮しなければならないのは、老齢動物の関節疾患(→高齢動物の関節疾患)、高齢動物の歯の疾患(→高齢動物の歯の疾患)で述べたような、認知症とは関係のない他の原因かないかどうかです。関節炎などの痛みがあれば低反発マットなどを使ったり鎮痛剤などで夜泣きがおさまる場合があります。また、高齢になると、脱水や腸の運動機能の低下によって便秘になりやすくなり、お腹にガスが溜り腹痛をおこしている場合もあります。この場合は水をすこしずつ飲ませたり、腹部のマッサージなども効果的です。気温や室温によって眠りに入りにくかったり、眠りが浅くなったりする場合があります。これからの寒い季節は寝る場所を温める工夫も必要です。ただし、温熱器具を使用する場合は低温火傷に十分注意してください。可能ならお部屋全体を温めることが理想的です。単に寂しいから鳴いている場合もあります。飼主さんの側に寝床を移すだけで解決することもあります。
改善がみられない場合は、まずは生活サイクルを元にもどしてみましょう。日光浴、お散歩、食事の時間などを、もう一度見直してください。昼間に体内時計を調節して覚醒を促す作用があるセロトニン(神経伝達物質の1つ)が、夜に覚醒と睡眠切り替えて自然な眠りを誘う効果があるメラトニン(睡眠ホルモン)の分泌が促されることが正しい姿です。また、EPA(エイコペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)などの不飽和脂肪酸を与えると夜泣きが改善する場合があります。不飽和脂肪酸の入ったサプリメントを投与してみるのも1つも方法です。一部のドッグフードにはこれらを添加しているものもあります。
上記のようなことを全て試してもダメな場合は薬を使用します。当院では、まずは前述のメラトニンを使用します。それでもダメなら睡眠導入剤を使用します。しかし、睡眠導入剤の効果は数時間だけです。夜泣きそのものを改善する薬ではありませんし、認知症の進行を早めるともいわれています。だんだんと用量を多くしないと効かなくなる場合が多いので、体への負担もあります。睡眠導入剤の使用は最後の手段です。
猫の夜泣きには甲状腺機能亢進症の問題があることが多いです。夜中に大声で鳴いたり、ドタバタと騒ぐ場合、まずは甲状腺のチェックが重要です。(→猫の甲状腺機能亢進症)