輸血の時に供血する動物のことを「ドナー」、受血する動物のことを「レシピエント」と呼びます。輸血は移植医療の一種で必ずしも安全ではありませんが、事故などによる大量の出血、重度の貧血、低タンパク血症、止血異常の時は輸血が必要となる場合があります。
レシピエント側の輸血の副反応としては発熱が一般的ですが、涎、失禁、嘔吐などが起こる場合もあります。重度の場合はドナーの血液がレシピエントの血液を破壊する「急性溶血反応」などの命に関わる症状が発現します。初回の輸血の場合は抗体がないため、副反応のリスクは少ないですが、2回目以降の輸血の場合は抗体ができている可能性があるため副反応を起こす可能性があります。また、原因は明らかになっていませんがレシピエント側に妊娠歴があると重篤な副反応を起こしやすいとされているため注意が必要です。
輸血が必要な時は生命にかかわる危機が迫っています。動物の医療では血液バンクがないので慢性的に血液が不足しています。動物の高齢化によって輸血の必要な場面も年々増えています。ドナーにご理解いただける方はご協力ください。
理想的なドナーの条件(病院によって多少の違いがあります)
犬
年齢:1~8歳
性別:♂;自然交配経験・予定なし ♀;妊娠・出産経験なく不妊手術済み
体重:15kg以上
予防:狂犬病ワクチン 混合ワクチン(5種以上) フィラリア予防 ノミ・ダニ予防
生活環境:室内外どちらでも可能
その他:健康であること レシピエントの経験がないこと
猫
年齢:1~8歳
性別:♂;自然交配経験・予定なし ♀;妊娠・出産経験なく不妊手術済み
体重:3.5kg以上
予防:混合ワクチン(3種以上)ノミ・ダニ予防
生活環境:完全室内飼育
そ の 他:健康であること 猫白血病ウイルス・猫エイズウイルスが陰性(-)であること レシピエントの経験がないこと
輸血の流れ
1.獣医師がドナーの健康状態をチェックします(異常があった場合には献血を中止します)。
2.ドナーとレシピエントから少量の採血をしてクロスマッチ試験を行います(輸血をしても大丈夫な相性かどうかを確認するものです)。
3.ドナーの頚または脚の血管から輸血用の採血をします。採血量はドナーの体重や体の大きさによって変わりますが、犬で150ml-400ml、猫で35-60ml程度です(当然ですがドナーに問題が起こらない量しか採血しません)。
4.レシピエントの静脈から輸血を行います。副反応が出ないか確認します。
5.ドナーに採血量と同量程度の点滴を行い、獣医師が健康状態をチェックしてドナーは退院です(ドナーにご協力いただいた動物は3ヶ月間はドナーになれません)。
ドナーご協力のお礼
当院では、当日の血液検査と次回のワクチンを無料とさせていただいております。
こちらもご参照ください
No174猫の血液型と輸血
No173犬の血液型と輸血