尿は腎臓で産生され、尿管を介して膀胱に貯留されます。膀胱に貯留した尿が体外に排出されるときの通り道となる管状の器官を尿道と言い、結石や栓子(細胞や炎症産物が塊になった物)などが原因となって尿道が閉塞してしまい、排尿ができなくなることを尿道閉塞(尿閉)といいます。尿道がペニスの部分で細く会陰部でS字状に湾曲している雄猫に多くみられます。また、飲水量が低下しやすい寒い時期に多く発生します。肥満も尿閉の発症リスクを高めることが分かっています。
血尿や頻尿、粗相などの初期症状に加え、元気食欲の低下、嘔吐、トイレでつらそうに鳴くなどの症状が見られたら要注意です。排尿が完全に不可能となった場合には症状が急速に進行し、治療介入が遅れると急性腎障害により死にいたる危険性もあります。24時間で腎障害が危険な状態になり、48時間放っておくと亡くなるといわれています。
問診や触診で尿閉が疑われた場合、直ちに尿道カテーテルや生理食塩水などを用いて塞栓子を膀胱内に押し戻し尿道の詰まりを解除します。これら緊急処置の後、血液検査にて腎障害の程度を評価し、レントゲン検査や超音波検査で他の尿路系に異常がないかどうかをを調べます。通常、腎機能や膀胱機能が回復するまでの間、入院での治療が必要になります。入院期間は重症度にもよりますが、数日から10日程度となることもあります。
一度尿閉を起こした動物はそのままでは再発の可能性が極めて高い為、食事の変更や環境の改善など内科的な再発予防を行います。それでも再発を繰り返す、あるいはそのリスクが高い場合は、外科的な再発予防手術(会陰尿道路形成術)の適応になります。
当院でも毎年多くの尿閉の動物を診察しますが、治療する上で何よりも大切なのは早く病院に連れてきて頂くことです。緊急性のある疾患なので、少しでもおかしいと思ったらまずはご相談ください。とくに雄猫は注意です。
猫の尿道カテーテル(トムキャット)
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No328尿石症:腎・尿管・膀胱・尿道結石