No.268 食物アレルギー

食物をアレルゲンとした即時型の食物アレルギー(食べてすぐに蕁麻疹や呼吸困難などの症状がでるもの)は、従来は経口摂取によりアレルゲンが体内に入ってアレルギーを引き起こすと考えられていました。しかし、現在では、肌のバリア機能が低下して湿疹があるところから食物などの様々なアレルゲンが体内に入り、アレルギーを引き起こすことが判明しています。これは経皮感作と呼ばれています。

本来は体に害を与えない食べ物を、なぜ異物と判断してしまうのでしょうか。感作されてしまう原因に関しては、まだ全てが明らかになっていませんが、体の中で何らかの炎症やダメージがある部位で食べ物と出会ってしまうと、体の免疫機構が、その食べ物を悪いものと勘違いしてしまい、感作されるのではないかと考えられています。そして、炎症やダメージがある部位の中で、最も重要な部位が子供の時期の湿疹のある皮膚であることが分かっています。

つまり、湿疹のある皮膚と家の中にある小さな食べ物のかけらが出会ってしまうことによって、その食べ物を悪いものと勘違いして感作されてしまい、その後に、実際にその食べ物を口から摂取した時に異物と判断し、免疫反応が過敏に働いてしまうというメカニズムです。これは哺乳類全般にあると考えられています。

食物アレルギーは、ヒトでも動物でも、若齢のころに発症する割合が高いと言われていますが、最近の研究では、経皮感作によって大人でも食物アレルギーを発症する可能性があることがわかっています。湿疹などで表面の角層が傷ついていると、アレルゲンはもとより細菌やウイルスの侵入を許してしまい、皮膚のバリア機能障害を引き起こします。これを防ぐためにも、保湿をしっかりと行うことがなによりも有効です。ヒトの研究では、新生児期から保湿剤を塗布していた乳児は、保湿をしていない乳児に比べてアトピー性皮膚炎を発症するリスクが低いということも判明しています。湿疹や炎症などの肌荒れが起きない様に、動物も赤ちゃんの時代からしっかりとスキンケアを行い、皮膚からアレルゲンを取り込まないよう注意することが重要です。

こちらもご参照下さい
No267 犬の皮膚の保湿