近年増加している疾患の1つが、急性胆管炎・急性胆嚢炎です。獣医学領域では、胆管閉塞、胆管破裂、胆嚢破裂などとも呼ばれています。主な症状は、嘔吐、食欲不振、嗜眠、黄疸、腹部の疼痛、下痢、発熱などです。
ヒトでも診断基準や標準治療が確立されていなかった1980年代は、致死率が80%以上でした(現代でも10%の死亡率です)。そして、獣医領域では現在でも診断基準、標準治療もありません。
病態としては、胆管が閉塞し、胆管内に著明に増加した細菌とエンドトキシン(グラム陰性菌の細胞壁の構成成分で発熱、炎症などを起こします)が、血流内に逆流する胆管内圧の上昇がみられます。いずれも、胆管炎や胆嚢炎、胆石、胆泥などによる胆汁の排出障害が原因で、適切な処置をしないと敗血症、多臓器不全になり死に至ります。ヒトでは軽症・中等症・重症にわけられていて、中等症以上は外科的な介入が必要です。外科的介入で最初に行われるのは内視鏡による胆管のドレナージ(溜まった胆汁や膿などを体外に排出すること)です。十二指腸の胆管の開口部から胆管の中にステント(流れる道)を作ります。しかし、小型犬・中型犬・猫では胆管ドレナージの出来る径の内視鏡がありません。よって、内科的治療で状態が落ち着きしだい緊急手術となります。手術は通常、胆嚢摘出、胆管-十二指腸吻合を行います。
急性胆管炎・胆嚢炎の一番のリスクファクターはヒトでは胆石ですが、犬猫の場合は胆泥です。胆泥があっても多くの犬猫は無症状です。胆泥が多い場合、早期に手術してしまうか、きちんとした経過観察(1-3ヶ月に1度の超音波検査、血液検査)などが必要です。
胆泥のある胆嚢のエコー
こちらも参考にして下さい
No70:胆嚢疾患