No.206 食べるのに痩せる場合

食べるのに痩せるという場合は消化器の病気を疑いますが、他の疾患であることもあります。単純なものは間違ったダイエットや食事量のミスによるカロリーの摂取不足、同居動物に食事を取られてしまっている場合などもありますが、食欲はあるのに痩せてきている状態がみられたら、以下のように原因を探して行きます。

1.便検査:便検査は消化器疾患の検査の基本の1つで、消化管内寄生虫疾患の発見や消化の状態を把握するために、身体一般検査と共に最初に行われる検査です。消化管内寄生虫がいても必ずしも下痢や嘔吐などの症状があるとは限りません。現在では、下痢を誘発する通常の便検査で発見できないような寄生虫や細菌、ウィルスをPCR法検査(遺伝子検査)によって診断することも可能です。
2.症状とシグナルメント(動物の年齢・性別・品種・雌雄など):次に体重減少以外の症状を探します。とくに吐出がある場合は巨大食道症などの食道疾患を、小腸性の下痢がみられる場合には消化管疾患を疑います。下痢や嘔吐がみられない場合でも消化管疾患がある場合があります。消化管疾患が原因でない場合は糖尿病、猫では甲状腺機能亢進症などの代謝性疾患を疑います。これらは血液検査で診断します。
3.特徴的な症状やシグナルメントがない場合:特徴的な症状やシグナルメントがなく病因が絞り込めないときは、やはり消化器疾患を疑います。膵外分泌不全吸収不良症候群炎症性腸疾患(IBD)を考えます。膵外分泌不全は血液検査で診断可能ですが、吸収不良症候群や炎症性腸疾患の診断には内視鏡による腸の細胞の生検が必要です。
4.その他:その他に考えられる疾患には、腫瘍全身性の炎症疾患に伴う悪液質(悪性腫瘍による、体重減少、低栄養、消耗状態)が挙げられます。これらは食欲不振を伴うことも多いですが、食欲が落ちない場合もあります。腫瘍が原因の場合は通常、大きな腫瘍がみられます。触診や画像診断でとらえられない腫瘍、骨髄腫リンパ腫の可能性も考えます。

このように、身体一般検査検査、便検査、血液検査、レントゲン・超音波などの画像診断、内視鏡検査などを状態に応じて使い、正確な診断をします。原因が複数の場合もあります。
以下もご参照ください
No41 1日当たりのエネルギー要求量(DER)
No40 ボディ.コンディションスコア(BCS)
No78 猫の甲状腺機能亢進症
No139 高齢猫の体重減少