未分類一覧

No.43 犬のスキンケア1

ヒトと犬の皮膚は違います。皮膚の外側から、表皮(細胞の集合)、真皮(線維(コラーゲン)の集合)、皮下組織(脂肪の集合)があるのは一緒ですが、いくつか大きな違いがあります。

まず、もちろん、一番の違いは体毛の多さです。ヒトは頭皮の1つの毛穴から2~3本の程度の毛が生えていますが、犬は主毛(トップコート)、副毛(アンダーコート)が何本も生えています。

次に、ヒトの汗腺はサラサラのエクリン腺が多く、犬ではベタベタのアポクリン腺の割合が多くなっています。犬は汗をかかないと言われていますが、実際には、ヒトほどではないにせよアポクリン腺からの汗をかいています。また、アポクリン腺からはフェロモンの分泌も起こります。犬や猫のパットの間からの汗はエクリン腺です。皮毛に覆われている犬は、汗をかいたときに皮膚のpHが上昇し、細菌(主にブドウ球菌)や真菌(主にマラセチア)が増えやすい環境となります。

また、犬の表皮はヒトに比べて薄いです(ヒトは200μm、犬は50~100μm)。外からの刺激(掻き続けるなど)が続くと表皮は厚くなります。アトピー時や、肘や踵の体重がかかる部分の胼胝(べんち)が代表的な例です。

表皮には生きている細胞と死んだ細胞が混在しています。表皮の成長(ターンオーバー)はヒトでも犬でも約3週間です。表皮をもう少し細かく見ていくと、外側から、角質層、顆粒層、有棘層、基底層に分類できます。角質層と顆粒層の間にはセラミドがあり、アトピー時にはヒトでも犬でも減少しています。

以上のことなどから、ヒトと犬の場合のスキンケアはかなりの違いが出てきます。ヒトのスキンケアは主に肌(角質層)を考えて行いますが、犬の場合は角質層に加え、体毛のヘアケアを含めたスキンケアとなり、塗るタイプのものではなくシャンプー剤が基本となります。

次回に続きます。


No.42 冷えについて

全身が体毛に覆われている動物でも、人間と一緒に暮らしているうちに、寒さに対してかなり弱くなってしまったようです。『冷えは万病の元』という言葉を聞いたことがある方も多いと思います。

そもそも、体が冷えるということは血液の循環が悪くなっているということです。血液は摂取した栄養素を体中に運搬したり、生命活動によって作られた有害物質を排出させるのに大きな役割を果たしています。また、代謝を潤滑に行うための酵素も体温が下がると活性が下がります。自律神経の作用も冷えによって低下します。よく言われることですが、平均体温が1℃下がると免疫力は37%低下し、1℃上がると60%活性化するそうです(どうやって調べたのか、非常に興味がありますが)。

人では、なんとなく調子が悪い、よく眠れない、頭痛、食欲不振、下痢、便秘などの原因の大きなものの1つが、冷えだと言われています。

動物でも人と同じような症状を示します。とくに、基礎疾患のある動物や、幼齢、高齢の動物、小型の動物はより注意が必要です。寒い場所では、末梢血管が閉まり血圧が上がります。幼齢、高齢の動物は、自分で体温調整が上手く出来ません。ハムスターなどの小型の動物は1日の中で気温差が5℃以上あると、疑似冬眠をし、そのまま放置すると、心臓のCaチャンネルが障害を受け亡くなってしまいます。

まだまだ、寒い日が続くこの時期、寒さによって体調を崩している動物が多くみられます。健康な人間が半そでで快適に暮らせるくらいの温度が、犬猫も快適に暮らせる気温です。もちろん、節電の必要な日本です。過度に温める必要はありませんが、お部屋の温度に少し気をつけていただいて、可能なら加湿器を用い、適度な運動をさせて、きちんとした栄養をとらせてあげて下さい。


No.41 1日当たりエネルギー要求量(DER)

動物の活動状態やライフステージ、生理状態、環境状態に応じた、1日に必要な動物のエネルギー量を計算してみましょう。いろいろな方法がありますが、シンプルで実用的なものをご紹介します。

・成犬:110×体重kg0.75kcal/day

・成猫:60×体重kg/day

上記の式で求めたものに、動物の活動量やBCS(前号のボディ.コンディションスコアを参照して下さい)を考慮して±20%の調整をします。

例えば、体重5kgの犬の場合は、

110×50.75=367kcal/day となります。

ちなみに、普通の電卓を使った0.75乗の簡単な方法は、5kgの場合は5を3乗して、

5×5×5=125

√を2回押します。

√√=3.34 この値に110をかけます。3.34×110=367kcal/day

BCS4とかBCS5の場合は、当然-10~20%で考えます。自分の与えているフードの量が、多いか少ないか計算してみて下さい。もちろん、急激な減量は健康を損ねます。とくに、肥満の猫ちゃんを急激に痩せさせるのは危険です。脂肪肝になるおそれがあります(1週間に1~2%の減量が推奨されます)。


No.40 ボディ.コンディションスコア(BCS)

明けましておめでとうございます。

本年もよろしくお願いします。

新年1回目は『ボディ・コンディションスコア(BCS)』です。栄養状態の判定は、動物の腰・腹部の皮下脂肪のつき具合を視診と触診によって評価します。品種によっての違いはありますが、一般的な評価法をご紹介します。

犬のボディ・コンディションスコア(BCS)

BCS1(削痩、理想体重の半分以下):肋骨や腰骨の骨格が浮き出ている。腹部は著しくへこみ、上から見ると砂時計型に見える。尾の付け根も明瞭。

BCS2(体重不足、理想体重の86~94%):わずかな脂肪に覆われていて、肋骨や骨の突起に容易に触れることができる。腹部の脂肪もごくわずかで、腹部はへこんでいる。

BCS3(理想体重、95~106%):少しの皮下脂肪に通して、肋骨や骨格の隆起に触れることができる。適度な腰のくびれがある。

BCS4(体重過剰、理想体重の107~122%):皮下脂肪に覆われて、肋骨に触るのが難しい。骨格の隆起はかろうじて触ることが出来る。腰のくびれを観察できず、上から見ると背中が少し横に広がっている。

BCS5(肥満、理想体重の123%以上):厚い脂肪に覆われ、肋骨に触ることができない。尾の付け根は腰部の脂肪に覆われ、明確でない。上から見ると箱型、樽型に見える。

猫のボディ・コンディションスコア(BCS)

BCS1(削痩、理想体重の半分以下):脂肪に覆われないため、肋骨や骨の突起に容易に触ることができる。腰のくびれが目立ち、脇腹のヒダがない。

BCS2(体重不足、理想体重の86~94%):わずかな脂肪を通して、肋骨や骨の突起に触ることができる。上からみると腰のくびれがある。

BCS3(理想体重、95~106%):肋骨は皮下脂肪を通して触ることができるが、外見からはわからない。わずかに腰のくびれがある。脇腹のヒダが存在する。

BCS4(体重過剰、理想体重の107~122%):肋骨になかなか触れることができない。腰のくびれはほとんどなく、腹部は丸くなっている。脇腹のヒダに脂肪がつき、やや垂れ下がっている。

BCS5(肥満、理想体重の123%以上):肋骨は厚い脂肪に覆われ、触るのが困難。著しい脂肪沈着で腹部は垂れ下がり、脇腹のヒダも歩くと揺れる。顔や四肢にも脂肪が沈着している。

簡単に言えば、肋骨に触れるか、犬ではお腹のくびれがどうか、猫ではお腹に脂肪が付いているかどうかが評価の分かれ目です。人に置き換えると、BCS2はモデルさん体型、BCS4はぽっちゃり型と言えます。また、BCS1は病的な痩せすぎです。まずは、基礎疾患の有無を早急に検査することが望まれます。BCS5では肥満から生じる様々なトラブルを考慮しないとならないでしょう(詳細はメルマガバックナンバー33.34『肥満が原因で生じる主な疾患』を参照して下さい)。


No.39 お正月に多い誤飲事故

お正月には、犬、猫に関わらず、異物の誤飲の事故が多くなります。人の場合はお餅が有名ですが、保険会社のアニコムの犬に対するアンケートでは『プラスチック製品』『人の医薬品』『チョコレート』『靴下、タオル、雑巾などの布類』『石や砂』『アクセサリーなどの小物』『果物、梅干の種』などが上位を占めています。

また、若い犬ほど誤飲を起こす傾向が強く、0歳~2歳の間がほとんどで、3歳以上では落ち着くようです。

犬種別では、バーニーズ・マウンテンドッグ、フラット・コーテッド・レトリーバー、ボストンテリア、ミニチュア・ピンシャー、ゴールデン・レトリーバー、キャバリア、ジャックラッセル、パピヨン、ダックスフント、ビーグル、トイ・プードルの順で多いとされていますので、0歳のバーニーズは要注意と言うことになりますね。

誤飲で緊急性のあるものとしては、串などの尖ったもの、紐類、医薬品、ネギやチョコレートなどの中毒を起こす可能性があるものなどでしょうか(中毒に関しては、メルマガのバックナンバー9、10。『犬、猫に与えてはいけない食品、薬』を参照して下さい)

串などで胃腸が穿孔したり、紐によって腸が手繰られてしまい急性腹症を起こすことはよく見られます。また、当然ながら医薬品やネギ類によって中毒が起こった場合も迅速な対応が必要です。

もちろん、お正月に関わらずですが、誤飲事故がないように十分注意してあげて下さい。

今年も1年間ありがとうございました。皆様、良いお年をお迎え下さい。


No.38 貧血(Anemia)2

メリークリスマス!今年もあとわずかですね。

貧血の続きです。

『大球性低色素性貧血』は貧血に対して骨髄が反応し、若い赤血球が多く出て来ている状態です。若い赤血球は大きくてHb濃度も高いです。急性の失血・出血(体内での出血も含む)、溶血などの時に起こります。溶血の原因は多くのものがありますが、バベシア・ヘモバルトネラ、レプトスピラ、フィラリアなどの感染症、ネギ類・薬剤、金属や植物などから引き起こされる各種の中毒、免疫介在性溶血性貧血(IMHA)、腫瘍・血栓などによる細血管の血流障害などが主なものです。

『小球性低(正)色素性貧血』は、赤血球は小さくHb濃度が低い状態です。主に鉄欠乏性貧血のことです。ノミやダニの大量寄生、慢性の出血(消化管や体内の腫瘍、持続的な血尿など)が原因です。

『正球性正色素性貧血』は、大きさ、Hb濃度に変化はなく、骨髄の貧血に対する反応が乏しい状態です。原因は、腎疾患、慢性炎症・慢性疾患(ACD:甲状腺機能低下症やアジソン病などの内分泌疾患、腫瘍や各種の感染症、皮膚病や外耳炎の慢性化した場合なども含まれます)、ある種の抗生剤、抗癌剤によるもの。造血障害(大球性正色素性の場合もあります)です。造血障害は各種の骨髄の疾患です。骨髄癆(骨髄がなくなってしまう状態です。骨髄増殖性疾患、腫瘍細胞の浸潤、肉芽種)・骨髄機能不全(非再生性免疫介在性貧血(NRIMA)、赤芽球癆(PRCA)、再生不良性貧血(AA)など)・骨髄壊死(感染症、毒素、腫瘍、低酸素、播種性血管内凝固(DIC)など)・骨髄の基質異常(骨髄線維症、骨軟化症、大理石骨症)などが見られます。骨髄疾患には難しい名前が並んでいますね。また、皮膚病や外耳炎でさえも長引くと貧血が起こることがあります。

次のステップは、必要に応じて、網状赤血球(成熟赤血球になる1段階前の赤血球)の測定、ウィルスの検査(猫の場合は猫白血病:FeLV、猫免疫不全ウィルス:FIVの検査は重要です)、免疫学的な検査(赤血球自己凝集試験、クームス試験など)、骨髄の検査(基本的に麻酔が必要となりますが、造血障害、骨髄疾患を診断するには必要な検査です)、遺伝子検査(PCR検査)をなどの特殊検査を考慮して、原因を突き止めて行くことになります。

治療は原因によって様々ですが、どんな貧血でも状態がひどい場合には輸血が考慮されます。一般的に、犬でPCVが20%以下、猫で10%以下の場合は輸血が必要なことが多いです。日本には犬・猫の血液バンクがないため、ドナー(血液を提供してくれる動物)を探さなければなりません。運よくドナーが見つかれば、クロスマッチ試験をして血液が適合することを確認して輸血を行います。ちなみに犬の血液型は複雑で、DEN型(犬赤血球抗原型)に関連した12~13種類のグループシステムが報告されています。猫はABグループシステムが用いられていて、A型、B型、AB型の3種類です。日本の調査では約90%猫がA型だという報告があります(とくに日本猫では95%以上がA型)。AB型は稀で1%以下と言われています。


No.37 貧血(Anemia)1

貧血とは、赤血球数(肺で酸素と結合し全身へ運びます。また、不要となった炭酸ガスも運搬します。RBC)、血色素量(RBCの主成分です。Hb)、血球容積(RBCの大きさです)が正常以下に減少することです。赤血球容積比(血中に含まれる赤血球の容積の割合。PCVまたはHt)の正常値は、犬で37~55%・猫で30~45%です。この値を下回ると貧血が示唆されます。

一般に、犬・猫の方が人よりも低酸素状態に強く、貧血に強いといわれています。そのため、飼主さんが気付いたときにはひどい貧血になってしまっていた。などということが多く見られます。貧血時の主な症状は、元気や食欲の低下、粘膜の蒼白、あえぎ呼吸(パンティング)、心雑音などです。黒っぽい便や色のおかしい尿、歯茎から出血している場合も貧血を示唆していることがあります。また、原因によっては発熱を伴っている場合もあります。貧血は診断名ではなく、基礎疾患の一徴候でしかありません。貧血が認められた場合、適切な治療を行うために以下のようなアプローチをしていきます。

まずは、血液が造られているかどうかを見るのが重要です。赤血球は骨髄で造られます。また、鉄分などのHbの材料が足りなくても血液は造れません。再生性の貧血(体からの赤血球の喪失量が造られる量を上回っている状態)なのか、非再生性の貧血(造られる量が少しかなく赤血球の補充が足りていない状態)なのかを分類します。そのためには、平均赤血球容積(MCV)と平均赤血球色素濃度(MCHC)の2つの値を算定が必要です(現在は機械によって数分で算定出来ます)。また、血液塗沫標本を作製し、血球の状態を顕微鏡上で詳細に観察します。

・平均赤血球容積(MCV):赤血球の大きさを評価する指標。正常値:犬60~77・猫39~55(fl)

・平均赤血球色素濃度(MCHC):血球1個に含まれるHbの濃度。正常値:犬32~36%・猫30~36%

MCV値が大きくなるのを大球性、MCHC値が小さくなるのを低色素性と言います。よく認められるパターンは、MCV増加・MCHC減少の『大球性低色素性貧血』。MCV減少・MCHC減少(または正常)の『小球性低(正)色素性貧血』。MCV正常・MCHC正常の『正球性正色素性貧血』の3パターンです。『大球性低色素性貧血』は再生性貧血、『小球性低(正)色素性貧血』『正球性正色素性貧血』は非再生性貧血です。

次回に続きます。


No.36 猫の膀胱炎

猫の膀胱炎の病態は犬より複雑です。下記のようなデータがあります。

特発性膀胱炎(FIC):55~64%

尿石症:15~21%

尿道閉塞:10~21%

先天性の解剖学的異常:10%

行動学的障害:9%

腫瘍:1~2%

細菌感染:1~8%

全部を足し算して100%にならないのは原因が2つ以上存在する場合があるからです。とくに一番多い特発性膀胱炎(Feline indiopathic cystitis FIC)が犬に見られないものです。

FICとは『血尿、排尿困難、頻尿、粗相などの下部尿路症状を伴うが、4~7日で自然寛解することがあり、同様の症状が再発的に繰り返される』と定義されています。簡単に言えば、原因がよく分からない膀胱炎が、良くなったり悪くなったりを1週間毎ぐらいで繰り返している状態です。原因としては、ストレス、神経炎症、病原微生物、尿路上皮バリアの変化、肥満細胞浸潤、自己免疫性疾患などが言われていますが、今のところ原因不明です。肥満猫に多い印象があります。人の間質性膀胱炎に似ているなどとも言われています。

診断は、基本的には除外診断です。最初に尿道閉塞がなければ、尿検査と、状況により超音波の検査で仮診断します。1週間程度で改善しなければ、超音波ガイド下での膀胱穿刺による尿検査(必要なら増菌培養)、尿路造影X線検査、血液検査などをして精査します。

治療はストレスの除去が1番大事だと思われます。パーソナルスペースの提示、楽しい運動、栄養素の見直し、トイレを増やす、人間の時間割を一定にする、雑音・強い臭いを減らす。なるべく高い声で話しかける。猫フェイシャルホルモンを使用する。などです。また、ドライフードをウェットフードに切り替えることや、体重のコントロールも重要です。

薬物治療としては、抗生剤、NSAID(非ステロイド系消炎剤)、鎮静剤、抗欝剤、粘膜保護剤、副交感神経遮断剤、輸液などが用いられますが、FICの場合、当院では、ホメオパシー、漢方薬、サプリメントなどのホリスティック治療をお勧めしています。


No.35 犬の膀胱炎

寒くなると、人と同じように動物でも膀胱炎になりやすくなります。おしっこを我慢し過ぎて過度に溜めてしまうことや、冷えなども原因になるようです。

犬の膀胱炎の一般的な症状は頻尿、血尿、排尿困難、排尿痛などです。発熱や食欲不振、嘔吐や元気が無くなったりしている場合は腎臓のトラブル、雄なら前立腺の問題なども考えます。

症状から膀胱炎が疑われた場合は、まずは尿検査を行います。尿検査は、自然排尿とカテーテルによる方法、超音波ガイド下で膀胱を注射器で刺して採尿する方法などがあり、検査の用途によって使い分けます。

犬の膀胱炎の大部分は細菌感染があり(多くは大腸菌の感染だと言われています)、抗生剤や止血剤の投与を開始すると同時に、おしっこを我慢しないですむようにお散歩の回数を増やしたり、トイレの数を増やしたり、寒くない環境を作ります。通常、1週間後に尿検査をして、状況が改善していれば同じ治療を2~3週間継続します。1週間経っても尿の状態が改善していない場合は、結石や腫瘍がないか、抗生剤がきちんと効いているか、先天的な膀胱の異常がないかなどを、超音波やレントゲン検査、血液検査などで精査します。

犬の膀胱結石は、ストラバイト、シュウ酸カルシウム、尿酸塩、シスチン、シリカの種類があります。多くは、ストラバイトかシュウ酸カルシウムで他の3種は稀です。ストラバイトのみ、ストラバイト溶解食と抗生剤の投与で内科的に小さく出来る場合がありますが、他の結石は外科的な処置が必要になります。ストラバイトでも大きなものは外科的な処置が推奨されます。

犬の膀胱腫瘍は、良性、悪性と両方ありますが、悪性腫瘍は移行上皮癌が最も多く、スコティシュ・テリア、ウェスト・ハイランド・ホワイト・テリア、シェットランド・シープドッグ、ビーグル、ワイヤー・ヘアード・テリアなどに発生が多いです。治療は手術、抗癌剤、放射線の癌の3大治療をベースとして、症例によって、ホメオパシー、漢方薬、サイマティクスなどの代替治療も考慮します。


No.34 肥満が原因で生じる主な疾患2

肥満が原因で生じる主な疾患2

泌尿生殖器疾患

不妊手術をした雌犬が高齢になると、尿道括約筋機能不全(尿失禁、お漏らし)が見られることが多くなります。理由は、まだ、明確ではありませんが、肥満による内臓の圧迫は発症を後押ししているようです。また、シュウ酸カルシウム結石も肥満により発症リスクが高まります。

腫瘍

人では肥満が閉経後に発症する乳癌の危険因子であることが指摘されています。犬猫でもメカニズムは不明ですが、疫学調査で肥満が乳癌の危険因子であるという結果が出ています。良性の脂肪腫の発生も肥満犬によく見られます。

呼吸器疾患

気管虚脱や軟口蓋過長症、パグ、ブルドッグ腫、ボストンテリアなどの短頭腫の呼吸困難も肥満によって症状が悪化します。また、体脂肪の増加に伴い熱中症のリスクも増大します。

麻酔リスク

脂肪組織は全身麻酔薬の貯蔵庫として機能するため、肥満動物の全身麻酔はリスクが増加することが報告されています。もちろん、前述の循環器、呼吸器の問題も理由となります。

関節疾患

体重の増加は各関節に過度の負担をかけます。通常、体重が倍になると、関節は4倍の強度が必要になると言われています。関節炎、前十字靭帯断裂や膝蓋骨脱臼、椎間板疾患の危険因子となります。

外耳炎、皮膚疾患

以外に思われるかもしれませんが、体脂肪の高い犬は、マラセチア(酵母型真菌、カビの一種です)性の外耳炎、膿皮症のリスクが有意に高くなることが報告されています。メカニズムは、まだ、分かっていません。

肥満は色々な疾患の危険因子となります。犬や猫にとっても、食事やおやつは大きな楽しみですが、ある程度はきちんとした管理が必要です。