前回は胆嚢の病気のお話をしました。今回は肝臓の検査のお話です。まず、肝疾患のときの主な症状は、
・元気、食欲の低下
・嘔吐、下痢
・体重減少、発育不良
・腹囲膨満(肝腫大、腹水による)
・多飲・多尿
・黄疸
・出血傾向
・神経症状(肝性脳症による)、行動の変化
上記ののようなものですが、肝疾患のときの症状は、もともとあいまいではっきりしないものが多いので注意が必要です。実際には、健康診断や犬の場合はフィラリア検査時の血液検査の結果、肝酵素を測定して、上昇が認められる場合にはじめて肝疾患を疑うことも多いです。
主な肝酵素には、
ALT(GPT):アラニンアミノトランスフェラーゼ
AST(GOT):アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ
ALP:アルカリフォスファターゼ
GGT:ガンマグルタミルトランスフェラーゼ
上記の4つが主に用いられています。ここで注意しなければならないのは、これらの値が上昇している場合でも、必ず肝疾患があるというわけではなく、また、全ての値が正常値の場合でも、絶対に肝疾患が存在しないというわけではないことです。これは、肝臓はさまざまな肝外疾患の影響を受けるため、肝臓自体には大きな問題がなくても肝酵素の上昇がみられることが非常に多いためで、このような状態は反応性肝障害などと呼ばれていて、代表的な疾患としては、胃腸疾患、膵臓疾患、敗血症(感染症)、代謝性疾患、心疾患(右心不全)、薬剤(ステロイド剤、抗てんかん薬など)などが挙げられます。とくに代謝性疾患の中で犬の副腎皮質機能更新症(クッシング病)や猫の甲状腺機能亢進症には注意が必要です。
今回で大事なことは、肝酵素の上昇がなくても必ずしも肝疾患は除外できないということと、肝酵素の上昇があった場合でも肝疾患でない可能性もあるということです。
次回に続きます。