乳腺に発生する腫瘍を乳腺腫瘍といいます。犬での発生率は全腫瘍の約30%で、その50%が悪性といわれています。猫では、全腫瘍の約17%で、そのうち90%が悪性であることが知られています。ウサギでは、きちんとしたデータはありませんが、比較的多く見られる腫瘍の1つです。
とくに悪性の乳腺腫瘍の場合、肺やリンパ節、肝臓、その他への転移を引き起こし、予後不良になることがあるため、発見したら、速やかな治療(ほとんどの場合は外科手術)が必要です。
原因
雌に多く(意外でしょうが、稀に雄にも発生します。雄に発生した場合は99%悪性です)、エストロゲン、プロゲステロンなどの性ホルモンが関与しています。若い時期に不妊手術を受けていないと発生率が高まります。
発生年齢
一般的に、犬では8~10歳以上ですが、若齢犬にもみられることがあります。猫では10~12歳以上の老齢に多く発生します。ウサギも高齢になると発生率が高まるようです。どの動物でも年齢を重ねるごとに発生リスクは高まります。
症状
『お腹に固いしこりがある』『おっぱいの1つ、もしくは複数が他のものより大きくなっている』などですが、腫瘍が大きくなりすぎていると自壊している場合もあります。自壊がなければ、動物は痛みもないし、とくに症状を示しません。
検査
乳腺腫瘍が疑われたら、まず、腫瘍のできた時期、大きさ、硬さなどを確認します。次に、腫瘍に針を刺すFNA(Fine Needle Biopsy)か、針を刺しシリンジで吸引するFNB(Fine Needle aspiration)という検査をして細胞の観察をします。ただし、乳腺腫瘍の場合、FNAやFNBで良性か悪性かを判断することは通常できません。FNAやFNBは、乳腺由来の腫瘍なのかどうかを判断することが主な目的です。また、皮膚にみられた腫瘍全般にいえることですが、軟らかいから良性、固いから悪性、固着がないから両性、固着があるから悪性、変色していないから良性、変色しているから悪性などと判断はほとんど無意味で不正確です。唯一いえるのは、急に大きくなってきたものは悪性の可能性が高いということです。
レントゲン検査、超音波検査では、乳腺と関係の深い卵巣や子宮の状態を詳細に観察し、他の臓器(とくに肺や肝臓)への転移の有無を確認します。また、血液検査とあわせて他の基礎疾患がないかなど、全身状態を詳細に検討し、手術時に麻酔に耐えられるかどうかをチェックします。
次回は、治療の話です。