No.67 重症熱性血小板減少症候群 (severe fever with thrombocytopenia syndrome,SFTS)

宮崎県、長崎県、山口県、愛媛県などで、マダニを介してヒトに感染するSFTSウイルスによって5人の方々が亡くなったという報道がありました。動物を飼っている方々の心配は、

・動物にも感染するのか?

・動物からヒトへ感染するのか?

・治療法・予防法は?

といったところだと思います。

SFTSウイルスとは、ブンヤウイルス科フレボウイルス属に分類される新規ウイルスです。マダニ媒介性感染症で、2011年に中国で初めて報告されました。マダニに咬まれることの多い哺乳動物への感染も報告されています。犬では感染の報告はありますが、発病したという報告は今のところありません(ここでいっているマダニは屋外ダニのことで、チリダニなどの屋内ダニとは違います)。

主な症状は、高熱、血小板減少を始めとする、血液凝固系の異常、白血球減少、リンパ節の腫れ、嘔吐、下痢(黒色便)、血尿、蛋白尿などの、いわゆる出血熱といわれているもので、今のところ有効な治療法はなく、対症療法が主となります。

感染経路は、マダニに咬まれることですが、患者さんの血液や体液による感染が報告されていますし、ウイルス血症を伴う哺乳動物との接触による感染もあり得るのではないかと考えられています。

これらの事から考えてみると、

・動物にも感染するのか?→感染はするが、発症の報告は今のところありません。

・動物からヒトへ感染するのか?→確認されてはいないが、可能性はあると考えられています。

・治療法・予防法は?→治療法は現在のところは対症療法のみです。もし、マダニに咬まれたら、一刻も早く病院に行って下さい。予防は、マダニに咬まれないようにすること。具体的には、草むらや藪などには、なるべく近づかない、長袖、長ズボンなどで、肌の露出を最小限にする。また、動物にはフロントライン、レボリューション、フォートレオン(犬のみ認可されている薬です)などのマダニの駆除薬で対策をすることなどでしょうか。細かいことをいうと、フロントラインやレボリューションは、身体に付いたマダニを駆除する薬、フォートレオンはマダニの皮膚への付着を制限します。今のところ、横浜では、フロントラインなどで十分だと思いますが、ご心配な方、マダニのいるような場所に犬と行かれる方はご相談下さい。

マダニによる感染症はSFTS以外にも、日本紅斑熱やライム病、犬ではバベシア症などもあります。これから暖かくなるとマダニの活動も活発になります。是非、きちんとしたプログラムで予防をして下さい。