No.525 SIRS (全身性炎症反応症候群)

SIRS(全身性炎症反応症候群)とは、外傷や熱傷、手術および感染などの侵襲を受けた局所でサイトカインが産生され、それが血中に吸収されて全身を循環し、全身的な炎症反応を引き起こしている状態をいいます。SIRSの状態になると、サイトカインの増加により組織の酸素代謝がうまくいなくなり、最終的に多臓器不全になり、死にいたることになります。発症した場合の約30%がショックを引き起こすとされ、一見何の症状のない場合でも、SIRSの基準を満たし、さらに要因を多くもっている場合は急変する危険性が高いことを念頭に治療する必要があります。

SIRSの診断基準


体温:<38.1℃ または >39.2℃
心拍数:>120回/min
呼吸数:>20回/min またはPaCO2<32mmHg
白血球数:<6000/μL または>16000/μL またはBand>10%


体温:<37.8℃ または >39.7℃
心拍数:<140回/min または >225回/min
呼吸数:>40回/min またはPaCO2<32mmHg
白血球数:<5000/μL または>19500/μL またはBand>5%

ヒト
体温:<36.0℃ または >38.0℃
心拍数:>90回/min
呼吸数:>20回/min またはPaCO2(動脈血二酸化炭素分圧)<32mmHg
白血球数:<4000/μL または>12000/μL またはBand(未熟型白血球)>10%

上記の2項目以上を満たす場合SIRSと診断されます。

SIRSは感染がなくても外傷、熱中症、膵炎、腫瘍、免疫疾患などでも起こります。感染が原因でこれらのSIRS所見を示す場合は敗血症(sepsis)と診断されます。

敗血症: SIRS+感染
感染症による全身的な炎症反応で、SIRSの状態が感染源に起因する場合。細菌やウイルスなどの感染が原因で、多臓器不全や血圧低下などを引き起こし、感染に対する免疫反応が過剰になり血液の循環不全を招きます。

重度敗血症:敗血症+臓器障害
敗血症にMODS(多臓器不全症候群)が加わった状態で、臓器不全(腎不全、呼吸不全など)が進行します。臓器機能が著しく低下し、集中治療が必要な危険な状態です。

敗血症性ショック:重度敗血症+血圧低下
感染が原因で全身に炎症が広がり(敗血症)、血管が拡張しすぎて血圧が維持できず(血管性ショック)、十分な酸素が臓器に届かなくなり、臓器障害が進行していくとても危険な状態です。

敗血症性ショック時の臓器不全は、循環器(低血圧)100%、呼吸器(低酸素血症による過換気)73%、血液(凝固不全、DIC)68%、腎臓(Cre↑、乏尿)49%、肝臓(Bil↑)32%の確率で起こると言われています。

敗血症や重度敗血症、敗血症性ショック、DIC(播種性血管内凝固症候群)、MODS(多臓器不全症候群)への進行を防ぐため、SIRSは早期診断・早期の治療介入が非常に重要です。