No.524 涙やけ

涙やけは、涙で濡れた眼の下の毛が赤茶色に変色してしまうことで病名ではありません。涙は本来無色透明ですが、毛に付いた状態のまま放置すると時間とともに赤茶色に変色します。そのため、特に白色や淡色の毛の動物で目立ちます。また、常に濡れた状態になると皮膚炎を起こす場合があります。何らかの原因で涙があふれている状態(流涙症)が長く続くと涙やけが起こります。トイプードル、マルチーズなどの小型犬に多くみられます。

本来、涙は涙腺から分泌され、眼の表面を覆うことで眼の乾燥を防いでいます。涙は眼頭にある涙点と呼ばれる穴の中へ入り、鼻涙管と呼ばれる管の中を通って鼻腔に流れます(涙点は犬猫で上下瞼に各1つずつ、ウサギは下眼瞼に1つあります)。涙やけは、何らかの原因で涙の量が異常に増えたり、眼の表面に涙を留めておけずに眼から溢れてしまったり、鼻腔へうまく排泄することができなかったりすることで起こります。

主な原因には以下のようなものがあります。
眼瞼内反症:眼瞼内反症とは瞼が内側に反ってしまっている状態です。先天的な事がほとんどで、小型犬や顔の皺の多い短頭種に多くみられます。瞼が内側に入り込み、睫毛が目の表面に当たり涙の量が増えます。また、下眼瞼の涙点に涙が上手く入らずに涙やけが起こります。
異所性睫・睫毛乱生:瞼の裏側に睫毛が生える異所性睫毛や、睫毛が目に向かって生える睫毛乱生などによって、睫毛が目の表面に当たると、涙の量が増えて涙やけが起こることがあります。
鼻涙管閉塞:生まれつき涙点がなかったり、鼻涙管が狭かったり、後天的に眼の炎症性疾患や外傷、腫瘍などの病気にかかり、鼻涙管が閉塞することで起こります。
アレルギー:アレルギーは、食物やノミ、花粉などに対して起こります。アレルギーの主な症状は皮膚炎や強い痒みで、眼の周りに症状が出ると結膜炎を引き起こし、涙の量が増えて涙やけが起こることがあります。

治療は原因によって異なります。内反症や睫毛の異常などは外科手術が必要な場合もありますが、酷い時のみ眼薬や内服薬を使う、眼の周囲の毛をこまめにトリミングする、朝晩きちんとお手入れをする事などで、通常は快適に生活することができます。


小型犬には涙やけがよくみられます