ヒストトリプシー(Histotripsy)は、高強度の超音波パルスを用いて組織を非侵襲的に破壊する技術で、ミシガン州立大学で開発されました。メスや針を使わずに、超音波によるキャビテーション(気泡の発生と崩壊)を利用して組織を破壊するのが特徴です。
これまで肝臓癌や膵臓癌、腎臓癌の治療の選択肢は主に手術、放射線療法、化学療法でした。これらには多くの場合深刻な副作用があります。現在、ヒストトリプシーがアメリカの50以上のヒトの病院で行われており、未来の癌治療として期待されています。
ヒストリプシーは、標的を絞った超音波を使用して、腫瘍内に微細な気泡を形成します。これらの気泡の形成と崩壊により生成される力によって腫瘍塊が崩壊します。全身麻酔は必要ですし、臨床的な積み重ねもまだまだ必要ですが画期的な治療法です。
健康な細胞にも影響を与える放射線療法などとは異なり、腫瘍のみに作用を集中させることで侵襲性が大幅に低くなり、周囲の健康な組織への損傷のリスクが軽減されます。しかも、腫瘍を破壊するだけではなく、免疫系が活性化するアブスコパル効果によって、他の部位の腫瘍も縮小させます。早く研究が進み、日本にも施設ができて、ヒトだけでなく動物達にも使用できるようになってほしいものです。
未来の癌治療ヒストトリプシー