No.520 食道裂孔ヘルニア

胸部と腹部を隔てる横隔膜には、大動脈と大静脈、食道が通る孔があります。この食道が通る孔が食道裂孔で、ここに胃の一部が入り込んでしまうことを食道裂孔ヘルニアと呼びます。

犬ではほとんどが先天性で1歳未満に多く、生まれつき食道裂孔が緩く、そこに胃が入り込んでしまうことで起こります。短頭種はリスクが高いことが知られていて、犬ではシャーペイやフレンチ・ブルドッグなどで注意が必要です。猫では3歳以上での発症が多く、加齢とともに食道裂孔がゆるくなり、ヘルニアが生じると考えられています。ペルシャやヒマラヤンでは注意が必要です。ウサギにも発症します。

症状としては、犬や猫で、流涎、吐き気や嘔吐、胃液の逆流などが見られます。若いころ無症状であっても、加齢や肥満、慢性の咳や嘔吐から発症する場合もあります。食べたものや胃液が逆流し、吐き気があったり、涎が多かったりなどの症状が見られます。こうした症状に関連して、逆流性食道炎や誤嚥性肺炎に発展する危険性もあります。また、子犬や子猫では、兄弟犬や兄弟猫と比べて発育が悪いケースもあります。無症状のことも多く、健康診断で偶然に発覚する場合もあります。

症状から食道裂孔ヘルニアが疑われる場合は、通常のレントゲン検査や造影レントゲン検査をして、胸腔に逸脱した胃を確認します。内視鏡で確認する場合もあります。

経過観察や内科的に治療を行うこともありますが、根本的な解決には外科手術が必要です。外科手術では、胃が再び食道裂孔に入り込まないように固定し、広がってゆるくなった食道裂孔を閉じて整復します。手術が上手くいけばその後は長く健康に過ごすことができます。


胸腔内へ飛び出している胃のレントゲン写真