動物の痛みの分類をしてみます。
性質による分類
・急性痛:障害、損傷によって認められる痛み。鋭く激しい。
・慢性痛:長期間持続している痛み。ズーンと痛い。じわっと痛い。
・癌性疼痛:癌やその治療に関連して生じる痛み。急性、慢性両方の性質を持ち、強い痛みが長期間持続する。痛みを完全に取り除くことが困難。
部位や原因による分類
・体性痛:骨、関節、皮膚などの損傷による痛み。鋭く疼くような痛み。急性痛とほぼ同じ。
・内臓痛:内臓を引っ張ったり、膨らませたり、炎症による痛み。ズキズキ、シクシクなどと表現されます。
・関連痛:実際には障害を受けていない部位や痛みの原因となっている部分から離れている場所で感じる痛み。深い部分の体性痛や内臓痛から引き起こされ、ゆっくりと進行します。
・異痛:軽くなでたり触ったりする程度の、通常は痛みにならないような刺激を痛みと感じてしまうこと。急性痛や体性痛がきちんと治療されていなかったり、軽い痛みが繰り返し加えられると起こることがあります。
・筋筋膜痛:硬直や筋痙攣、こわばり、関節の可動性の減少などと関連して、筋肉や筋膜、周囲組織に生じる痛み。
・神経性疼痛:神経への直接的な障害による痛み。激しくズキズキした痛み。
痛みにもいろいろな種類がありますね。最後に、痛みの客観的な測定法をご紹介します。いくつかの種類がありますが、『動物の痛み研究会』が作成した急性痛のペインスケールが良くまとまっています。いつもと様子が違って、以下のような症状が見られたら、お早めにご相談下さい。
犬の急性痛のペインスケール
レベル0:痛みの徴候は見られない。
レベル1(軽度の痛み):ケージから出ようとしない。逃げる。尾の振り方が弱い。人が近づくと吠える。反応が少ない。落ち着かない。寝てはいないが目を閉じている。元気がない。動きが緩慢。尾が垂れている。唇を舐める。術部を気にする。ケージの入口に尾を向けている。
レベル2(軽度~中程度の痛み):痛いところをかばう。第3眼瞼の突出。アイコンタクトの消失。自分からは動かない。じっとしている。食欲低下。耳が平たくなっている。立ったり座ったりしている。
レベル3(中程度の痛み):背中を丸めている。心拍数増加。攻撃的になっている。呼吸が速い。間欠的に唸る。震えている。頬に皺をよせる。体に触れると怒る。流涎。横になれない。過敏。術部を触ると怒る。
レベル4(中程度~重度の痛み):持続的・間欠的に泣き喚く。全身の硬直。持続的に唸る。食欲廃絶。眠れない。
猫の急性痛のペインスケール
レベル0:満足していて静か。快適。周囲に興味がある。術部や体に触れても痛がらない。
レベル1(軽度の痛み):症状は微妙。引きこもり。周囲に興味がない。触診に反応したり、しなかったり。
レベル2(軽度~中程度の痛み):丸まって寝ている。被毛は粗剛。食べ物に興味なし。触診に対して攻撃的に反応したり、逃げたりする。
レベル3(中程度の痛み):物悲しく鳴く。動こうとしない。触診に対して唸ったりシャーという。
レベル4(中程度~重度の痛み):周囲に反応しない。ケアを受け入れる。触診に反応しない。