No.489 肛門腺炎・肛門嚢自壊

犬猫には肛門の両脇(正面から見て4時、8時の位置)に肛門腺という臭腺が存在します。肛門嚢とも呼ばれます。イタチやスカンクの臭いおなら(正確にはおならではありませんが)で有名です。フェレットの場合はペットショップに来る前に手術で摘出されている場合が多いです。肛門腺の中には臭いの強い分泌液が入っており、この臭いによって相手を認識したり、マーキングに利用しているといわれています。普段は排便時や興奮時などに自然に排出されています。犬の場合はトリミング時にトリマーさんが絞って排出させてくれています。

肛門腺の分泌液の出口は肛門の中にあります。この肛門腺が何らかの理由で炎症を起こしたものが肛門腺炎です。肛門腺から肛門までの導管に炎症が起きると管が塞がってしまう事があります。そうなると行き場を失った肛門腺内容物が過度に溜まって破裂を起こします。これが肛門嚢の自壊です。

主な原因としては、肛門腺が排出出来ていない事ですが、細菌感染や不適切な肛門嚢絞りなども原因となります。肛門括約筋の筋力低下や肥満なども原因の一環とされているようですが、実際には痩せていても発症するし、外肛門括約筋の菲薄化など一切ない症例でも肛門嚢破裂が起こります。

一般に、チワワやシーズー、ミニチュアダックス、トイプードルなどの小型犬と猫でよくみるトラブルですが、大型犬での発症もあります。

治療は、軽度なら剃毛と外用薬、抗生剤や鎮痛剤などの投与で改善しますが、重度の場合は外科的な対処が必要です。


肛門嚢自壊

以下もご参照下さい
No.332 肛門腺 (Anal glands)