ヒトと犬の耳では構造が全く異なります。大きな違いのひとつが耳毛の存在です。犬の耳の中には毛が生えていて、かなり密集している犬もいれば、うっすら生えている程度という犬まで品種差があります。ミニチュア・シュナウザーやプードルなど水猟犬として活躍していた犬は、水鳥などを捕るために水中に入ることが多く、撥水のために耳毛がたくさん生えているといわれています。また、マルチーズ、シーズー、ヨークシャテリアなども耳毛が多い犬種です。一方、チワワやダックスフント、ポメラニアンなどは少ない犬種です。
耳毛は水をはじく以外にも、汚れやホコリの侵入を防ぐ役割をします。しかし、ペットとして飼われるようになった現代の多くの犬には、本来の役割のための耳毛は不要になりました。犬にとっては耳毛が生えていることが自然な状態なので、これをむりやり抜く必要はないという意見もありますし、近年、耳毛抜きが動物愛護の観点、動物虐待の観点から実施しない獣医師やトリマーさんも増えてきています。しかし、欧米と異なり高温多湿の日本では、蒸れる事によって外耳炎の原因になっている場合も多いです。外耳炎になった事がある、通気性が悪くなっている、耳掃除の邪魔になっている、外耳道内が脂性という様な場合は抜くかカットが必要です。上手に手早く行えば痛みはほとんどありません。
耳毛の処理は獣医師の間でも、抜く派、カット派に意見が分かれます。個人的にはどちらでも良いと思いますが、自宅で行う場合は、抜くなら毛抜き、カットするなら眉毛用ハサミなどがオススメです。耳が健康なら、月1回くらいの頻度で傷つけない様、丁寧に行って下さい。上手く出来ない場合、また、痒い、赤い、耳垢が多い、臭いがおかしいなど、トラブルが起こっている場合は必ず病院へご相談下さい。
耳毛処理前
処理後
以下もご参照ください
No.188 外耳炎3(Otitis Exterma)
No.58 外耳炎2 Otitis externa
No.57 外耳炎1 Otitis externa