No.468 木天蓼(またたび)

「猫に木天蓼(またたび)」ということわざがあるように、多くの猫はまたたびが好きです。猫はまたたびを与えると陶酔したように楽しく動き回る姿を見せます。そういった行動は非常に可愛らしいものですが、与え方を間違えると危険です。

またたびとは、マタタビ科マタタビ属の木で山に自生しています。またたびの木には、正常な実と虫癭果(ちゅうえいか)と呼ばれる実の2種類がなります。猫が好むとされているのは虫癭果で、ハエやアブラムシが実に卵を産み付けることで変形したものです。表面がつるんとした楕円形の正常な実に対し、虫癭果は表面が凸凹としています。またたびは夏梅とも呼ばれ、6月頃から葉っぱが白くなり梅に似た白い花が咲きます。

商品としては、枝や実、粉末やスプレー状のものなどが市販されており、猫が舐めたり匂いを嗅いだりすることで反応が起きます。またたびによる反応は、猫の上顎にあるヤコブソン器官(フェロモンを感知する器官)が、マタタビラクトンやアクチニジンといった成分を感作することにより引き起こされます。これらが中枢神経に作用し、転げ回ったり走り回ったりといった酔っ払った陶酔したような姿を見せます。一時的なもので依存性はほとんどないとされています。

反応には個体差がありますが、使いどころには以下の様なものがあります。

ストレス解消:一時的に活発になり、運動することでストレス解消が見込めます。運動不足解消におすすめです。

食欲増進:食欲が少し落ちている時に効果が期待できます。しかし、食欲不振は病気の可能性もあるので、様子がおかしい場合は早めに病院に連れて行ってください。

老化防止:猫は食事をする時にあまり咀嚼をしないので、またたびの入ったオモチャをかじることで脳が刺激を受け、老化防止につながると言われています。

このような良い効果が期待されるまたたびですが、与え方を間違えると危険性もあります。大量に与えすぎると、中枢神経が麻痺を起こし呼吸困難になってしまうことがあります。また、飼い主さんが出かけている時に、猫がまたたびを見つけて丸呑みしてしまうなどの事故にも気を付けて下さい。他にも、またたび入りのオモチャが壊れて中の粉末が出てきてしまうなどの事故により過剰摂取をしてしまうケースは少なくありません。このような事態を防ぐためには、与え方や保管場所に注意しておく必要があります。

また、粉末、液体、実、枝の順で作用の強度が高いとされています。強度によって適量が変わります。最初は少し嗅がせる程度から始め、個体差があるので、様子を見ながら少しずつ量を増やしていき適量を判断しましょう。幼猫のうちは与えない方が良いです。体内の器官が十分に発達していないとパニックを起こす可能性があります。また、老猫や心臓に疾患がある猫にも体に負担をかけてしまうので与えない方が無難です。

与え方は、匂いを嗅がせる方法と直接食べさせる・舐めさせる方法があり、それぞれ特徴があります。匂いを嗅がせる方法は刺激は弱いですが長続きします。オモチャに入れるのが一般的です。直接食べさせる・舐めさせる方法は、刺激は強いものの効き目が短いです。美味しそうに舐めることがありますが、上顎のヤコブソン器官に擦り込んでいると考えられていて、飲み込むとすぐに効果が薄れます。毎日だと効果が薄れていくので、しつけのご褒美といった特別な時に与えるなどが良いです。


またたび(夏梅)の花