No.442 卵巣嚢腫

卵巣嚢腫とは、卵巣内に液体が溜まる袋状の病変ができることです。卵胞嚢腫と黄体嚢腫があります。卵胞嚢腫は卵胞が発育して、排卵しないまま卵胞が成長し続けるもので、黄体嚢腫は卵胞嚢腫の卵胞壁が黄体化を起こしたものです。多くの動物で起こりますが、猫やウサギは交尾刺激が無いと卵胞が排卵して黄体が形成されないため、黄体嚢腫の方の発症はほとんどありません。

症状は、卵胞嚢腫ではエストロジェンの作用により発情が持続することが多いです。その影響で、外陰部の腫大や、発情出血などの発情兆候が持続して見られます。エストロジェンの産生が起こらない卵胞嚢腫もあります。その場合は発情兆候が出ませんので発見が遅くなりやすいです。また、黄体嚢腫ではプロジェステロンの分泌により、子宮蓄膿症を併発することがあります。

診断は、腹部超音波検査により卵巣の腫大や嚢胞を確認します。また血中エストロジェン値や、プロジェステロン値を測定することもあります。超音波検査で、卵巣嚢腫と似たような所見がみられる事のある卵巣腫瘍との違いは、病変摘出後の病理検査によって確定診断されます。

治療の第一選択は外科的切除です。手術が選択できない場合は、注射でのホルモン剤投与による排卵誘起処置を行います。ただし成功率は高くないことと、発情毎に再発する可能性が高いです。いずれの治療でも、長時間発情が持続していた場合は外陰部や乳頭の腫大などの症状が完全に消失しないことがあります。予防は不妊手術です。


卵巣嚢腫の超音波画像

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