No.419 ユーサイドシック症候群 (Euthyroid Sick syndrome)

甲状腺機能が正常(Euthyroid)であるにもかかわらず、他の原因で甲状腺ホルモンが低値になる状態をユーサイドシック症候群 (Euthyroid Sick syndrome)といいます。

甲状腺は喉のやや下の左右にあり甲状腺ホルモンなどを分泌する腺組織です。小さな組織ではありますが、ヒトを含めた動物が生存するために必要な甲状腺ホルモンを分泌し続けることで、休むことなく代謝のコントロールを行っています。甲状腺ホルモンが分泌されないと、は全ての細胞、組織、生物は生き続けることができません。

甲状腺機能低下症は犬では代表的な内分泌疾患の一つでクッシング症候群に次いで多くみられます。甲状腺で産生・分泌されるサイロキシン(T4)や、トリヨードサイロニン(T3)などから成る甲状腺ホルモンの欠乏によって起こり、程度は様々ですが、運動性の低下、無気力、肥満傾向などの典型的な症状を起こしやすいとされています。通常は自己免疫性疾患です。

一方、ユーサイドシック症候群の原因には、腫瘍、感染症、循環器疾患、貧血、糖尿病、クッシング症候群、慢性腎不全、クレチン病などの多くの疾患が考えられます。また、抗癲癇薬、ステイロイド剤などの一部の薬剤でも甲状腺ホルモンが低くなることがあるため、甲状腺機能低下症と診断する前には、その他の病気や使用している薬剤などを除外診断しながら行います。

ユーサイドシック症候群は、長期に渡る全身状態の悪化や、特定の薬物の作用に対して体が基礎代謝を低下させて対処しているという生理的に正常な反応ひとつです。このため、通常原因となっている状態が取り去られれば甲状腺基礎値は正常な値に戻ります。

こちらもご参照ください
No77 犬の甲状腺機能低下症