No.418 低温火傷(やけど)

低温火傷とは、熱湯や火などに触れて起こる高温火傷よりも低い温度で起こる火傷です。具体的には体温より少し高い44~50℃前後のものに、皮膚が直接、もしくは数分~数時間にわたって触れ続けることで発症します。就寝時などに数時間かけて発症するケースがよく見られますが、50℃に近いものだと数分触れているだけで起こることもあります。また、皮膚が薄い場所の場合は低温・短時間でも火傷を起こしやすくなります。

低温火傷は皮膚の表面ではなく奥でじわじわ進行します。通常、初期症状は皮膚が赤らむ程度です。痛みなどを感じることもなく、自覚症状のないまま皮膚の奥をじわじわと傷めていきます。温度は低いものの決して軽い火傷ではなく、高温火傷と同様に重症になるにしたがって、赤みやヒリヒリが出る→水疱(水ぶくれ)や痛みが出る→乾燥し感覚がなくなる、といった症状が出てきます。気付かないうちに皮膚移植が必要なほど重症化することもあります。受傷後2週間程度は注意が必要です。

動物の場合はペットヒーターによる事故が最も多くみられます。ペットヒーターに直に皮膚が付くような使用は危険です。ヒーターの温度管理も重要です。とくに高齢動物や肥満や病気で動きが少ない場合は注意が必要です。

低温火傷にかかわらず、火傷は皮膚が損傷を受けた深さによって以下のように分類されます。

表皮までの損傷であるI度と浅いII度であれば治療後に跡は残らず、軽い色素沈着が起きる程度です。II度以降の損傷を受けるとほとんどの場合傷跡が残ります。特にIII度まで進行していると皮膚の切除や移植をするケースにもなりかねません。III度の火傷は治療に長い時間がかかる上に大きな傷跡が残ります。低温火傷は損傷に気付き辛く症状が進行していてもわからないことがあります。低温火傷は自分で熱傷深度を判断できない火傷です。また、腎臓を傷めている場合もあります。火傷を発見したら放置せずに受診してください。

火傷の傷口は日に日に状態が変わるので毎日の観察が重要です。II度以上の場合は新しい皮膚ができるまで、感染を起こさないこと、壊死組織がある場合はこまめに取り除くことが大切です。重症な場合はガーゼ、包帯等を使って管理する場合もあります。肉球や足先に火傷を負った場合は汚れが付着しやすく感染を起こしやすいです。体毛の多い動物では外用薬が困難な場合が多いので、抗生剤や消炎剤の内服が必要なこともあります。トイレは常に清潔にする、雨の日の散歩は控えるなども必要です。


ペットヒーターで起こったウサギの低温火傷