No.376 カメの卵詰まり

カメの卵詰まりは、毎年10%ほどの個体で発生するというデータもあるほど、頻繁に起こる疾患です。主な症状としては、食欲不振、脱水、産卵行動、活動性の亢進・低下、息み、総排泄腔脱、体重減少、後躯麻痺(後肢麻痺)、嗜眠などがあります。ただし、一見症状が見られない場合もあるので注意が必要です。正常な発情でも食欲は低下しますが、極端に低下することはありません。食欲が落ちても産卵直前の数日だけのことが多いです。極端に食欲が落ちている場合は早目の対処が必要です。

春から初夏(4月~7月)に食欲がなくなってきたり、元気がなくなってきたら卵詰まりの可能性があります。後肢で土を掘るようなしぐさをしている場合もあります。状態が悪化すると、1日中眼を閉じたままになったり、口から泡を出すこともあります。腹腔内にたくさんの卵を持っている場合は、卵によって周囲の神経が圧迫されて、後肢の動きが悪くなることがあります。また、卵によって周囲の臓器を圧迫し、便や尿が出にくくなったり、腎不全を引き起こしたりすることもあります。卵が総排泄腔で詰まった場合、亀は激しく息みますが、この状態が長く続くとぐったりし、卵によって総排泄腔が塞がれて排便や排尿が完全にできなくなることがあります。このような状態になると、たとえ卵を取り出せたとしても体力が回復せずに亡くなってしまうことがあります。

カメは間隔をあけて何度かにわけて産卵する場合もあるので、一度産卵が終わったからといって、しばらく卵詰まりは大丈夫と安心してはいけません。雄を同居させていなくても、雌単独で無精卵を形成し詰まることがあります。

診断は、レントゲン検査、エコー検査などで行います。治療は、カルシウム剤やビタミン剤を投与します。それでも産卵しなければ、オキシトシンというホルモン剤も使用します。また、飼育環境の見直しも必要です。具体的には卵詰まりの亀に最適な温度や湿度で管理して適切な産卵場を用意します。リクガメでは特に温浴(35℃の温水で15分程度)を行うことも重要です。狭い場所で飼育している場合は卵詰まりが起きやすいです。適度な硬さの土も必要です。

内科的治療でよくならない場合は、食道瘻チューブで栄養を補ったり、最終手段は手術による卵の取り出しを行います。手術は爬虫類ならではの麻酔の問題がありますが、早期に行った方が救命率が高いです。


カメの卵詰まりのレントゲン