ハムスターのウェットテイルとは、尻尾が水溶性の下痢や腸からの分泌物よって濡れた状態になるためにこのように呼ばれます。幼体のハムスターでよくみられる症状で、重篤化しやすく生命に関わることもある消化器病です。正式な名称は増殖性回腸炎または伝染性回腸炎といいます。
ウェットテイルは、カンピロバクターなどの腸内細菌、酵母型真菌、ウィルス、トリコモナス、ジアルジアなど原虫感染をはじめとする寄生虫感染、不適切な食事、ストレスなどの原因が様々に関わって発症すると考えられています。
症状は、尾部、臀部、尻尾周辺が水溶性下痢で濡れている状態になります。ひどい場合は下半身がずぶ濡れに見えるようになることもあります、黄色下痢や水様性下痢が続いて脱水症状を伴っていることが多いです。食欲不振からの栄養不良が長引くと体重減少、削痩を呈し次第に衰弱していきます。下痢による激しいしぶりは腸閉塞や直腸脱などの生命に関わる重大な合併症を引き起こすこともあります。
診断は、まずは身体検査でお尻周りの汚れがないかを確認します。食欲不振を訴えて来院したハムスターのお尻周りが下痢便によって汚れていることが診察室で発見されることもよくあります。下痢の量が少ない場合には飼主さんがこういった変化に気づくのは難しいこともあります。外見でウェットテイルの状態を確認したら、糞便検査でジアルジアやトリコモナス原虫などの寄生虫の異常な増加や、増殖して運動性を増した腸内細菌がいないかどうかを調べます。多くの場合典型的な症状に加えて、糞便検査で細菌や寄生虫感染が認められます。
治療は、糞便検査で確認された原因によって抗生剤や抗菌剤、駆虫薬の投与を行い、下痢による脱水を予防ないし改善させるための皮下輸液などの支持療法が必要となります。重症化して腸閉塞や直腸脱が起こった場合は緊急手術が必要になることが多いです。軟便くらいのうちに早目に対処することが重要です。
また、ご自宅に迎えたころに、寄生虫などがいないかどうか、検便を含め全身のチェックを病院で受けておくことが推奨されます。ハムスターに最適な環境管理がなされていない場合にも発症し易いため、ハムスターが生活するのに適した温度(20~26度)や湿度(40~60%)を常に保つようにしましょう。また、オガクズの床敷きはやめて、紙製なものか牧草を使いましょう。
ハウスターの軟便。この段階で対処しましょう。
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