猫の膀胱炎の病態は犬より複雑です。下記のようなデータがあります。
特発性膀胱炎(FIC):55~64%
尿石症:15~21%
尿道閉塞:10~21%
先天性の解剖学的異常:10%
行動学的障害:9%
腫瘍:1~2%
細菌感染:1~8%
全部を足し算して100%にならないのは原因が2つ以上存在する場合があるからです。とくに一番多い特発性膀胱炎(Feline indiopathic cystitis FIC)が犬に見られないものです。
FICとは『血尿、排尿困難、頻尿、粗相などの下部尿路症状を伴うが、4~7日で自然寛解することがあり、同様の症状が再発的に繰り返される』と定義されています。簡単に言えば、原因がよく分からない膀胱炎が、良くなったり悪くなったりを1週間毎ぐらいで繰り返している状態です。原因としては、ストレス、神経炎症、病原微生物、尿路上皮バリアの変化、肥満細胞浸潤、自己免疫性疾患などが言われていますが、今のところ原因不明です。肥満猫に多い印象があります。人の間質性膀胱炎に似ているなどとも言われています。
診断は、基本的には除外診断です。最初に尿道閉塞がなければ、尿検査と、状況により超音波の検査で仮診断します。1週間程度で改善しなければ、超音波ガイド下での膀胱穿刺による尿検査(必要なら増菌培養)、尿路造影X線検査、血液検査などをして精査します。
治療はストレスの除去が1番大事だと思われます。パーソナルスペースの提示、楽しい運動、栄養素の見直し、トイレを増やす、人間の時間割を一定にする、雑音・強い臭いを減らす。なるべく高い声で話しかける。猫フェイシャルホルモンを使用する。などです。また、ドライフードをウェットフードに切り替えることや、体重のコントロールも重要です。
薬物治療としては、抗生剤、NSAID(非ステロイド系消炎剤)、鎮静剤、抗欝剤、粘膜保護剤、副交感神経遮断剤、輸液などが用いられますが、FICの場合、当院では、ホメオパシー、漢方薬、サプリメントなどのホリスティック治療をお勧めしています。