No.353 猫の変形性関節症2(Osteoarthritis:OA)

つい最近まで猫は歳を取ったら動かなくなるものと考えられていました。それはヒトと同じで若い時とは違うから運動できなくて当たり前という認識があったからだと思います。

近年、6歳以上の猫の多くに変形性関節症(OA)が認められることがわかってきました。以前はDJDと呼んでいた疾患です。OAは軟骨のみならず骨、滑膜、半月板、靱帯、筋肉、神経が、疾患の発症から進行まで複雑に関与する全関節組織の疾患です。また、OAは肩、肘、股関節、足根関節に好発し、61%の猫は最低1つ、48%はの猫は2つ以上の関節が罹患していて、罹患率は年齢と相関しているという研究結果があります。とくにスコティッシュフォールドは、ほぼ100%の確率で発症します。

症状は、運動性やグルーミングの減少、社交性の低下、気分の変化、不適切な排泄ですが、具体的には、
・ジャンプの能力の低下
・毛玉が増えたり、爪が汚れる
・イライラして友好的でなくなる、孤立
・触られること、撫でられることへの拒否、ブラッシングを嫌がる
・トイレの失敗、便を埋めない
などです。ただし、猫のOAの初期症状は痛がるといった明らかなもので出てこず、高いところに登らなくなった、高いところから降りるのをためらうなどの、飼主さんが年齢のせいにしてしまうような症状しか出ないことがほとんどです。末期病態は関節の可動制限と疼痛の発生が出現し歩行困難となります。診断は、症状に加え、主にレントゲン検査で行います。

OAは進行性病変のため、一旦発症すると残念ながら完全に元に戻すことはできません。進行を緩徐にして痛みの管理をしてあげる事が治療です。痛みの知覚には、感情、過去の経験、社会的・環境的 背景に影響される複雑な感覚・感情のメカニズムが関与しています。痛みが長く持続すると、抑うつなどの心因的症状が 進展して、それが痛みをさらに増悪させ、心因性疼痛(非器質性疼痛)となります。例を挙げると、痛みを脳が記憶してしまい鬱などの精神疾患を生じます。ひどい症状が出る前からのケアが重要です。

具体的な治療には体重管理、サプリメントや代替医療による関節の保護や、マッサージや半導体レーザーによる理学療法、飼育環境の整備などがあげられます。疼痛管理の悪い循環は、痛む→力が入らない→動けない→安静にする→筋力が弱る→軟骨がすり減る→痛む。
良い循環は、力が入るようになる→動けるようになる→筋力が戻る→軟骨が保護される→運動療法が可能になる→力が入るようになる。です。

OAの痛みは、愛猫にとって深刻な健康問題となります。そして猫は痛みを隠します。猫がこの頃おとなしくなったり、ジャンプが減ってきた場合は、関節に問題があるかもしれません。

こちらもご参照下さい
No247猫の変形性関節症
No200半導体レーザー
No140痛み
No51痛みについて3
No50痛みについて2
No49痛みについて1