直腸が肛門から反転して飛び出してしまった状態を直腸脱とよびます。犬や猫、フェレットでも起こることがありますが、とくに、ハムスターやチンチラは直腸脱を起こしやすい動物として知られていて、犬や猫、フェレットの場合と違い、命にかかわることが多い疾患で、迅速な対応が必要です。
直腸脱は、下痢や便秘、加齢などが素因となって、過度の腹圧がかかった時に起こります。下痢にはウェットテイルと呼ばれる腸疾患や寄生虫が関わっていたり、便秘には腎不全や水分摂取不足などが関与していることがあります。また、異常な蠕動によって腸の中に腸が入ってしまう腸重積を起こしている場合も多いです。一番多くみられるのは、ハムスターの幼体が下痢をしている時です。
飛び出してしまった腸は、鬱血や感染を起こしてしまいます。処置をせずに時間が経過してしまうと、飛び出した腸が壊死してしまったり、全身に感染がまわって、命にかかわることがあります。とくに腸重積を起こしている時は予後が悪い場合が多いです。
治療は、まずは脱出した腸をなるべく早くに肛門内に戻すことです。すぐに病院へ行きましょう。再脱出することも非常に多いので縫合糸で肛門を巾着縫合します。すでに腸が壊死している場合や、再脱出をする場合は、全身麻酔下での開腹手術が必要になります。また、原因となるような疾患の治療も同時進行で行います。治療はとにかく時間との勝負です。とくに開腹手術は状態が悪くなる前に行うことが必要です。様子をみることは良くない結果になることが多いです。
ハムスターの直腸脱は幼体で下痢をしている場合に多いので、お家に迎えたら、まずは寄生虫がいないかどうか、飼育法が間違っていないかどうかなどを、動物病院で確認してもらってください。また、チンチラでは高齢で多い印象です。定期的な健康診断を受けて下さい。
腸重積で壊死した大腸を取り除き、健康な部分で繋いだところ(手術時の写真が出ます。苦手な方はクリックしないで下さい)
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