肛門から粘膜や直腸の一部が脱出すること脱肛と言います。正常でも排便時の息みで一時的な脱出がしばしば見られることがありますが、通常は排便後に自然に戻ります。 脱出が習慣となり、元に戻らない状態になったものが病気としての脱肛です。
とくに幼体のフェレットには脱肛が多く見られます。その理由はよく分かっていませんが、息み過ぎや肛門腺除去の手術の影響が原因として考えられています。
息むと腹圧がお尻にかかり脱肛します。ヒトの妊婦さんが妊婦してお腹の子が大きくなると痔になりやすいと言われているのと同じです。幼体のフェレットに脱肛が多い理由には、ふやかしたフードから固形フードへ切り替える時に、一時的にお腹を壊しやすいことがあげられます。他にも幼体は腸内細菌が安定しておらず、腸内細菌叢のバランスを崩しやすく、軟便や下痢を起こしやすいといわれています。フェレットの性格にもよりますが、興奮しやすかったり、あるいはケージから脱出しようと頑張って息んでしまうこともあります。胃腸に異物が詰まっていたり(消化管閉塞)、膀胱結石や尿道閉塞で尿が出にくい時も腹圧がかかります。また、フェレットは幼体期に肛門脇にある2つの臭腺を除去する手術を受けています。この臭腺を取り除いたがために、肛門に余裕が作られ、息んだときなどに脱肛しやすくなるのかもしれません。
脱肛すると痛いです。自然に治ることもありますが、早期対応しないと元に戻らなくなるので動物病院で治療を受けるのがベストです。軽度だと軟膏を塗って、粘膜の炎症を抑えるようにするだけで治ることもあります。しかし、薬を塗ってもフェレットが舐めてしまうために、塗り薬での治療は長期化することが多いです。便が硬くならないようにふやかしたフードを与えるなどして息む原因も減らすようにします。粘膜がひどく出てしまっている場合には、粘膜を中に入れて肛門の周囲を縫い合わせる手術を行います(巾着縫合)。この処置は局所麻酔で可能です。1~3週間後に抜糸します。重度の場合は全身麻酔下で大腸を腹壁に縫い付け、直腸が脱出しないようにします。
フェレットの脱肛は幼体に多いです