No.330 眼瞼腫瘍

犬の眼瞼(まぶた)に発生する腫瘍の20~30%は組織学的に悪性と言われていますが、逆に言えば大半(80~90%)のものが臨床的に良性です。性差はなく、どちらかというと上眼瞼に発生しやすいです。好発犬種としては、ビーグル、シベリアンハスキー、イングリッシュセッター、プードル、ジャックラッセルテリア、ラブラドールレトリバー、ゴールデンレトリバーといわれていますが、どの犬種でも発生します。もっとも多いものはマイボーム線由来の良性の皮脂腺腫です。また、犬の眼瞼腫瘍は局所再発はみられますが、他部位への転移は稀です。

猫での眼瞼腫瘍の発生は少ないですが、発生したら、扁平上皮癌、肥満細胞腫、メラノーマなどの悪性のものである確率が高いです。とくに白い猫に多いです。

治療は外科的な切除と凍結手術が中心となります。眼瞼部はあまりサージカルマージンは取れませんが、犬での報告で、再発率は外科切除で15%、冷凍外科手術で11%、再発するまでの期間は外科手術で28.3ヶ月、冷凍外科手術で7.4ヶ月であったというものがあります。

眼瞼の1/4-1/3くらいまでの大きさなら手術は大変ではありませんが、それ以上になると、他の部位の皮膚で眼瞼を形成する必要があり、手術が頻雑になります。とくに腫瘍が角膜表面に当たってしまっている場合は早目の治療が必要です。眼に限らず、天然孔(眼、耳、鼻、口、外陰部、肛門)の近くの腫瘍は、なるべく小さなうちに対処する必要があります。


犬の上眼瞼の腫瘍