肥満が問題となるのは、肥満がなんらかの健康障害を発生させることがあるからです。人医学では1つの診療科を形成するまでの大きな分野になってきています。犬猫の肥満の病態は人と異なることも多いのですが、主な疾患をご説明します。
循環器疾患
肥満によって高脂血症を持っている人では、低密度リポ蛋白(LDL)が増加して血管病変を作ることが動脈硬化の発端として知られています。心臓の筋肉に分布する冠状動脈の血行障害が虚血性の心疾患です。虚血が部分的なものを狭心症、進行すると心筋梗塞となります。
犬猫では、冠状動脈の数が多いことや代謝酵素の違いから、人のような虚血性の心疾患にはなりづらいとされていますが、体重が増加すれば、抹消の酸素要求量が増し、左心室の負荷が増大し心疾患のリスクが高まります。
猫の糖尿病
人では肥満は糖尿病の危険因子と考えられています。人の糖尿病は、膵臓のインスリン分泌細胞の障害から発生する1型糖尿病と、抹消組織のインスリン抵抗性の増大を発端とする2型糖尿病に分類されています。このうち、肥満と関連するのは2型です。人の分類を犬猫に当てはめると、犬の糖尿病には1型が多く、猫の糖尿病は多くが2型です。様々な実験調査の結果からも、今のところ、肥満が犬の糖尿病の危険因子とみなせるだけの結果は出ていませんが、猫の糖尿病に関しては肥満が危険因子と考えられています。
猫の脂肪肝
肥満している猫は脂肪肝のリスクが高いです。数日間の絶食によって発症する危険があります。猫の脂肪肝は背景には膵炎があることが多く、膵炎+脂肪肝の状況は非常に予後が悪いです。どのような原因であっても、太っている猫の食欲が急に落ちた場合は迅速な治療が必要です。減量も急激なものは危険です。
犬の急性膵炎
犬では肥満は急性膵炎の危険因子です。痩せている犬で急性膵炎が起こることも、もちろんありますが、肥満による高脂血症を持っている犬と、そうでない犬の急性膵炎の発症率には有意差が出ています。詳しいメカニズムは、まだ、分かっていません。
次回に続きます。