No.316 キアリ様奇形 (Chiari-like Malformation:CM)

キアリ様奇形とは、ヒトに見られる先天性奇形によって起こるキアリ奇形1~4型のうち1型に類似した奇形が犬で認められる事がわかり、その疾患に対する呼び名です。後頭骨形成不全症候群(Caudal Occipital Malformation Syndrome: COMS)と呼ばれることもあり、後頭骨とくに大後孔の奇形によって小脳ヘルニアを伴い、後頭蓋窩容量が減少している状態で、骨性の先天的奇形です。小脳の一部が頭蓋骨の穴から滑り出して脳幹を圧迫してしまい脳脊髄液の流れに変化を起こし、脊髄内に異常な液体貯留、脊髄空洞症(次回説明します)を起こし、様々な臨床症状を起こす疾患です。

小脳と脳幹が収まっている部分の頭蓋骨の大きさが、豆腐のように柔らかい内容物に対して少し小さすぎる事が根本的な異常ではないかと考えられていますが、詳細はわかっていません。キャバリアキングチャールズスパニエルが特に有名ですが、それ以外の小型犬種でも珍しくありません。

一般的に若い頃に発症することが多く、知覚異常、痛み、側湾症、ファントムスクラッチと呼ばれる片耳や肩の辺りを継続的に掻く行動異常などが認められます。キアリ様奇形を持つ犬は脳室の拡大、脳幹の形状異常に関連していると考えられる脳梗塞などを起こすことも知られており、それらによる痙攣発作や急性の脳障害などを起こす事もあります。本症を持つ患者さんのうち約75%は次第に症状が悪化することが知られています。診断には症状と神経学的検査の他、MRI検査が必要です。

治療は内科的なものが中心で、小脳による脳幹の圧迫や脊髄空洞症による痛みや不快感を軽減するために内服薬を使用します。外科的治療は後頭骨の一部を除去し、小脳による脳幹圧迫を軽減します。約80%の患者さんで症状の改善が期待できると言われていますが、数年かけて徐々に症状が再発することもありますので長期的な予後は要注意です。


キャバリアちゃんはとくに注意