No.299 SDMA (対称性ジメチルアルギニン)

SDMA (対称性ジメチルアルギニン)は、アミノ酸の1つであるアルギニンが腎臓でメチル化されできる代謝物です。SDMAの血中濃度の上昇は、心血管疾患、腎疾患のリスク上昇と関連していることが報告されていて、腎機能のバイオマーカー(ある疾患の有無や、進行状態を示す目安となる生理学的指標のこと。 生物指標化合物ともいいます)となることもわかっています。近年、獣医療においても、慢性腎臓病(CKD、→No55慢性腎臓病1No56慢性腎臓病2)の早期発見の検査にSDMAが使われて出しました。比較的新しい検査ですが測定機会は非常に多くなって来ています。また、CKDのステージ分類にも変更がありました。

SDMAには3つの特徴があります。

1.糸球体濾過率(GFR、腎機能を表す値)の優れた指標となる腎機能バイオマーカーである

2.慢性腎臓病においてクレアチニンよりも早期に上昇する(SDMAは腎機能が40%喪失した時点で上昇するのに対し、クレアチニンは75%喪失するまで上昇しない)

3.筋肉量の影響を受けるクレアチニンと比較して腎機能に特異的→SDMAは筋肉量の影響を受けない(クレアチニンは、筋肉が多い動物では高値になりやすい検査です)

SDMAを測定することにより、CKDを早期発見し、処方食やサプリメント、代替医療などによって、CKDの進行を遅くすることが可能です。CKDも症状が出てから検査する時代から、定期的な健康診断で病気を早期に発見し予防する時代となりました。ある程度の年齢(犬7-8歳、猫6-7歳)になったら、元気そうに見えても年に1-2回の定期健診をして、SDMAを測定することがオススメです。とくに猫ちゃんは高率に腎疾患にかかるので、半年毎くらいの検査が推奨されますCKDの特徴的な症状である多飲多尿や食欲不振、嘔吐、削痩などがなくても、SDMAが14以上あった場合は症状がなくても何らかの治療を開始するのがオススメです。