ウサギの飼主さんに『メルマガにウサギがほとんど出てこない』と言われました。今回はウサギに一番多いトラブル、不正咬合についてです。
ウサギの全ての歯は一生伸び続ける常生歯です(無根歯とも呼びます)。ちなみに、成獣の歯の数は全部で28本で、生後約40日で乳歯から生え変わっています。常生歯は、チンチラやモルモット。ハムスターやラット、プレイリードッグの切歯(前歯)。象やイノシシの牙(犬歯)にも見られます。
不正咬合の病態は、先天的(遺伝的)、後天的な原因(事故、いつも金網などを齧っている、牧草を食べておらず、歯の運動が出来ていないなど)により、歯が変な伸び方をして噛み合わせが悪くなり食事をとり辛くなります。また、過剰に伸びた歯が、唇や舌や頬の内側を傷つけ口腔内が痛くなり、よだれが増えたり食欲が減退します。重度になると、歯の根っこに膿みを持ったり、咀嚼が上手くいかずに下痢を起こすなど、様々な問題が生じます。歯って大事なんですね。
診断は、飼育環境や食事を詳しく聞かせていただき、口腔内を口腔鏡で観察することやレントゲン検査などで行います。軽症の場合は内科的な治療によって口腔内の痛みを取り除き、歯の運動を再開させ磨耗をうながしますが、重症例では歯を削ることが必要になります。歯を削る場合に、切歯(前歯)の場合は麻酔は必要ありませんが、臼歯(奥歯)の処置には、基本的には全身麻酔が必要となります。
予防は、飼育環境の整備をして、歯に対する事故を防ぐことと、イネ科の牧草のチモシーを食べてもらって、なるべく、歯を使ってもらうことです。とくに、小学校などで、ウサギを飼育している場合、給食の残りで育ててしまっていると不正咬合が生じやすくなります。何校かの小学校でウサギの話をさせていただきましたが、残念ながら、小学生の先生方はこの知識がない場合が多く、たくさんのウサギが不正咬合になっている状況です。小学生のお子様がいる方は、機会があれば、学校のウサギちゃんにも注意してあげてみてください。