犬猫の血圧の研究はたくさんありますが、正常値は、
・収縮期血圧(最高血圧)100~150mmHg
・拡張期血圧(最低血圧)60~100mmHg
・平均血圧80~130mmHg
と言われています。この数値は人間の血圧の正常値と似ています。ですが体格によっても異なりますし、品種によっても幅がありますし個体差もあります。この数値より異常に高くないか、低くないかという点に気をつけてあげることが大切です。
犬や猫では、最高血圧が150mmHg、最低血圧が95mmHg以上で高血圧と診断されます。とりあえずの目安としては、最高血圧が犬で150mmHg 以上、猫で160mmHg以上なら治療が推奨されます。180mmHg以上の場合はかなり合併症のリスクが高い重度の高血圧と設定されています。
ヒトの場合は、血圧が高くなるはっきりとした原因が特定できない本態性高血圧症が多いですが、犬猫の高血圧は、心臓病・腎臓病・内分泌疾患(糖尿病、犬のクッシング病、猫の甲状腺機能亢進症)などから二次的に認められることがほとんどです。
高血圧を放置しておくと、高血圧が原因で重い症状が現れることがあります。アメリカ獣医内科学会(ACVIM)は、犬猫での血圧測定と全身性高血圧の診断および治療に関するガイドラインを公表しています。このガイドラインでは、血圧を高血圧によって臓器に組織障害が発生する危険度と関連付けて分類しています。
高血圧で組織障害が起こりやすいのは、「腎臓」「眼」「中枢神経」「心臓血管系」の4カ所です。
腎臓の障害は、多飲多尿・体重減少・食欲不振・嘔吐等の症状として現れます。尿検査で蛋白尿が認められる時は、高血圧が原因の場合があります。
眼の障害は、突然の失明・瞳孔の散大・赤目(眼内出血)等の症状として現れます。眼底検査で、網膜の浮腫や剥離・眼底血管の蛇行・眼底出血・視神経乳頭の浮腫等があるかどうかで判定します。特に猫で網膜病変が認められた場合の血圧は、その他の組織障害が認められる場合に比較して、高血圧が著しいことがわかっていますので、網膜病変は、高血圧に伴うすべての症状の中でも、最も重要な所見となります。
中枢神経の障害は、痙攣発作・虚脱・無関心・見当識障害・抑鬱・眼振・斜頚・運動失調などの症状として現れます。これらは高血圧による脳浮腫・脳内出血・脳梗塞等が原因で起こります。神経学的検査やMRI検査で判定します。
心臓血管系の障害は、運動不耐性や呼吸促迫等の心不全兆候・心雑音・不整脈等の症状として現れます。胸部レントゲン検査・心エコー検査・血液検査等で判定します。
ACVIMガイドライン
ACVIMガイドラインでは、高血圧治療の開始の目安として、
1.眼、中枢神経に組織障害が認められる場合では、危険度Iの段階から
2.腎臓、心臓血管系に組織障害が認められる場合では、危険度II以上の段階から
を推奨しています。高血圧はサイレントキラーなどとも呼ばれ、気づいた時には重症化している場合も多いです。個人的には組織障害が出ないうちに治療を開始すべきだと思います。8歳を過ぎたら年に1-2回の健康診断で血圧測定をして、高血圧を早めに発見して対処しましょう。
犬の血圧測定