猫の変性性関節症(DJD)とは、関節に炎症が発生した状態で、関節面の摩耗や関節にかかる荷重バランスの変化によって軟骨にダメージが蓄積することで発症します。軟骨が破壊されると周囲の滑膜の炎症が誘導され、滑液中へのヒアルロン酸分泌が減ることでさらに軟骨代謝が悪くなり、軟骨の変性が進む悪循環により、関節構造は本来のクッションとしての役割を充分に発揮できなくなっていきます。痛みや運動障害、生活の質の低下をもたらす疾患です。高齢の猫の約90%の猫がX線検査でDJDの徴候を示し、うち40%の猫では疼痛に関連する臨床症状を示すとされています。
原因としては加齢による関節軟骨の老化がまずあげられます。猫では少ないですが、前十字靭帯断裂、膝蓋骨脱臼、股関節形成不全等の整形外科疾患や外傷、場合によっては栄養的な問題も要因となり得ます。そのほかスコティッシュフォールドなどの特定の猫腫に特徴的にみられる骨軟骨異形成症といった遺伝的疾患によって若齢から症状を現すこともあります。また、肥満による関節への負担増は疾患の発症と悪化のリスクを高めます。
しかしながら、猫のDJDは十分に診断・治療がされていません。その理由の1つに臨床症状として跛行が認められづらいということがあげられます。そのため、飼主さんはDJDの臨床症状を加齢に伴う変化と認識してしまうことが多くあります。このようなことから、猫の飼主さんに対するDJDのスクリーニングのためのチェックリストをノースカロライナ大学の榎本先生らが作成しました。
・あなたの猫は普通に跳び上がりますか?
・あなたの猫は普通に跳び降りますか?
・あなたの猫は普通に階段を上りますか?
・あなたの猫は普通に階段を下りますか?
・あなたの猫は普通に走りますか?
・あなたの猫は動く物(おもちゃなど)を追いかけますか?
上記に1つでも当てはまる場合は変性性関節症(DJD)の可能性があります。
治療のメインは痛み痛みの管理です。NSAID(非ステロイド系抗炎症薬)、サプリメント、半導体レ-ザ-などで炎症を取り除き痛みを和らげます。また、減量も重要です。早目に診断・治療をして、猫の痛みを取り除いてあげましょう。