No.235 角膜潰瘍 (Corneal ulcer)

角膜は眼球の前面で、映像を網膜に届けるために透明で、眼球内容物を守る強い膜です。約0.5mmという薄い膜であるにもかかわらず強度があり、表面から上皮、実質(コラーゲン線維)、デスメ膜、内皮の4層からなっています。眼の疾患の中でも角膜潰瘍はよく見られる疾患です。猫ではヘルペスウイルスが原因となっている場合が多くあります。

一概に潰瘍と言っても、その程度は様々で、軽いものから、上皮(一番上の層)の潰瘍を表層性潰瘍、実質まで達した潰瘍を中層性~深層性潰瘍、デスメ膜まで達した潰瘍をデスメ膜瘤、角膜に穴が開いてしまった状態を角膜穿孔といいます。また、角膜のコラーゲン線維が融解した状態の潰瘍を融解性潰瘍と言います。どの潰瘍も痛みや充血、目脂が見られ治療が必要です。とくに、デスメ膜瘤、角膜穿孔、融解性潰瘍は危険な状態です。それ以外にも、最近増加している、見た目的には重篤な潰瘍に見えなくても、数週間から数ヶ月間治らない自然発生性慢性角膜上皮欠損(SCCEDs)などがあります。

デスメ膜瘤
角膜潰瘍が深くなり、内側の薄い膜しか残っていない状態です。いつ角膜に穴が開いてもおかしくない状態です。角膜穿孔した場合には、失明の危険が高まるため、出来るだけ穿孔する前に外科手術により潰瘍を修復することが必要です。

角膜穿孔
角膜に穴が開いてしまった状態です。眼球内の主には前房水という眼の中の液体が眼の外に出て来ます。前房水だけでなく、虹彩や中には水晶体などが出てくることもあります。眼の中の構造物が出てくることはもちろん大変なことですが、前房水だけでも出て来た場合でも、眼球が虚脱し、眼内出血や網膜剥離、将来的に緑内障を引き起こし、失明にいたることもあります。緊急手術が必要になります。

融解性潰瘍
細菌感染などの要因で、角膜のコラーゲン線維を溶かす酵素が働き、丈夫な角膜を溶かしていく状態です。進行が早いことが特徴で、半日で角膜が真っ白に混濁し、ぶよぶよした状態になります。特にシーズーやパグなどの短頭種は融解性潰瘍を起こしやすい犬種です。酵素の働きを止め角膜の融解を止めないと角膜穿孔になります。

自然発生性慢性角膜上皮欠損(SCCEDs)
角膜の表面の上皮が剥離した状態で、表層性潰瘍に分類されます。通常、表層性潰瘍は1-2週間で治癒するはずですが、いつまでも良くも悪くもならない潰瘍です。この場合点眼だけではよくならないので、やはり角膜表面の外科処置が必要になります。治療用のコンタクトレンズなども使う場合があります。


角膜潰瘍