No.234 小型犬の橈尺骨骨折

橈骨、尺骨とは前足を構成する前腕部の骨で、これらの骨折はトイプードル、チワワやポメラニアンなどの小型犬でよく認められ、抱っこからの落下やソファーからのジャンプといった些細な事故の結果起こるものがほとんどです。通常は橈骨、尺骨の両方の骨折が起こり橈尺骨骨折と呼ばれますが、それぞれ単独での骨折が起こることもあります。診断は触診とレントゲン検査です。

治療は通常、外科手術が選択されますが、この部位は周囲の組織が少なく、血流が乏しい骨のため、他の部位の骨折と比べても骨がくっつかない癒合不全が起こりやすい上、特に多い遠位骨折(手首に近い方での骨折)では少しのズレが足の変形につながってしまいます。また、犬はヒトと違い、後肢よりも前肢の方に体重の負荷がかかっています。そもそも安静にするという概念はありません。適切な手術法の選択が必要です。

外固定や髄内ピンなどの固定法を単独で用いた場合には癒合不全などの合併症が起こるリスクが高く、特別な症例を除いてはプレート法または創外固定法などの方法で強固な固定をすることが望ましいとされています。プレート法と創外固定法にはそれぞれ特徴があり、骨折の形態や犬の年齢、体重、活動性、健康状態、飼主様のご意向など、様々な要素をもとに治療方針を決定します。

近年、血流阻害を起こしづらいロッキングプレートや、重量の軽いチタンプレートの登場で、癒合不全のリスクは格段に減少しましたが、プレートの破損事故なども稀にみられ、厄介な骨折の1つです。


トイプードルの橈尺骨骨折(チタン製のロッキングプレート)

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No180 ロッキングプレート